ACE COMBAT 5のサントラを聴きながらふと思ったこと。
それは、「これはヒーローの物語の音楽である」ということ。
裏を返せば、軍人の物語ではない、ということ。
しかし、ACE COMBATシリーズ主人公には紛れもなく軍人もいます。
そこで、シリーズ各作品の主人公がどちらかを考えてみました。
(最後までやっていないシリーズ作品は割愛しました)
定義 §
軍人とは、軍人としての義務を履行する者を示す。いかに非凡な成果を出そうとも、その範囲に収まる者は軍人として分類する。
ヒーローとは、軍人としての義務の範囲に収まらない、別の何らかの行為を行うことで、大きな問題を解決する者を示す。
なお、傭兵は軍人と見なします。
ACE COMBAT 2 スカーフェイス1 §
基本的には軍人ではありますが、「軍人としての義務」というには過剰な成果を期待され、実際にそれに応えていることから見ると、ヒーローとしての属性もありそうな印象です。
ACE COMBAT 3 ネモ §
勝手に移籍したり、勝手にクーデター軍に参加したり、勝手に参加したはずのクーデター軍と戦ったり、これはもう軍人ではなくヒーローでしょう。
ACE COMBAT 04 メビウス1 §
全てのミッションで通常の軍事作戦の枠組みを逸脱しません。まさに軍人です。
ACE COMBAT 5 ブレイズ (キャンペーン モード) §
戦争の背景にある陰謀を暴く、というのは通常の軍人の役割を逸脱します。最も明瞭に軍人ではなくヒーローとなる主人公でしょう。
ACE COMBAT 5 メビウス1 (アーケード モード) §
単機でクーデター軍を壊滅させるし、その上ミッションの展開も自発的に選択して戦います。
ACE COMBAT 04 メビウス1が軍人であったのに対して、明らかにヒーローです。
同一人物であるのに性格が全く変わっています。興味深いですね。
ACE COMBAT ZERO サイファー(ガルム1) §
基本的には命令通りに戦うだけであり、軍人と見なせます。
しかし、最後のミッションでピクシーと対決する部分だけは、軍人としての義務を超えて、かつての僚機を目覚めさせるための個人的な戦いが入っているような気もします。そういう意味で、ヒーローとしての属性も部分的に備えているような印象も受けます。
ACE COMBAT X グリフィス1 §
命令されるだけでなく自ら意志決定を行う場面もあり、軍人という枠組みに収まりきらない部分があるような感じがあります。
別の言い方をすれば、MISSION 13以降のオーレリア領内を離れた戦いは、オーレリアを直接防衛するオーレリア軍の責務を超えたヒーロー的行動とも言えるような気がします。
ACE COMBAT 6 タリズマン(ガルーダ1) §
MISSION 11『モロク砂漠戦車戦』で暴走するシャムロックに付き合って、命令違反をしてしまいます。その点で、軍人としての義務の範囲に収まらない何かをしているようにも見えます。しかし、作中でその行為は完全に「良くないこと」と評価され、MISSION 12『大量破壊兵器無力化』によって失点は挽回されます。つまり、全体として軍人としての義務の範囲内で行動していると言えます。つまり、タリズマンは軍人だと思います。
軍人とヒーローとオンライン §
私がゲームのストーリー部分に期待するものは、現実世界では味わうことが不可能であること。つまり、自分がヒーローになるという体験です。仲間と一致協力して、巨大な問題を解決する……というような、自分を対等のメンバーの1人にするような行為は、現実世界でも可能です。というよりも、日常的に要求される行為です。そうではなく、自分だけが突出した特別な存在になるのは、ゲームの中ならではの出来事でしょう。
そういう意味で、ヒーローになれないACE COMBAT 6は物足りなさが残ります。
しかし、オンラインを含めて考えると、タリズマンはヒーローであってはならないことも分かります。オンラインで行われる対戦の多くは、「自分を対等のメンバーの1人にする」ことを通して、仲間と一致協力してミッションをクリアする目標が課せられます。そのようなミッションを含む世界観において、プレイヤーの「私」が突出した特別な存在になることは整合性を損ないます。
従って、オンラインを目玉に据えたACE COMBAT 6は必然的に主人公をヒーローにできないと言えます。
逆に言えば、オンラインやオフラインの対戦の機能を一切含まないACE COMBAT 5は、何の問題もなくプレイヤーをヒーローに見立てることができるわけです。だから、ブレイズとして飛んでも、メビウス1として飛んでも、ACE COMBAT 5の世界ではプレイヤー=ヒーローの構造が貫徹されます。そこが、ACE COMBAT 5に感じるスカッとした突き抜けた心地よさの理由かもしれません。
感想 §
そういえば、スカイ・クロラ(仮)のことが気になります。
これは、どちらの方向性の主人公になるのでしょうか。
一応、若干原作小説を囓った範囲内の私の印象からいえば、ヒーロー型主人公ではないか、という気がしますが……。定かではありません。