2009年03月13日
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読者の異論に答えて・サトシ対シンジのポケリンガ戦に見るスタイルの相違を振り返る

Written By: トーノZERO連絡先

 2009年03月12日放送「ポケリンガ!天空大決戦!!」の感想である「強いぞサトシ、シンジにポケリンガで勝利だ! (運に依存した勝利だけどね!)」に亜麻さんより異論が届きました。

ポケモンアニメを見た後更新された感想を読んだのですが、微妙に納得がいかない部分があります。それは「運に依存するサトシの勝利」です。確かに進化によって流れは変わりましたが、全ての事柄が優勢になったとは到底思えません。最後の指示はサトシが諦めずに、普通のトレーナーなら考え付かないような手であり、サトシらしいものだったと思います。

さらに、一番強調したいのは「運に依存する勝利」というのはサトシ限定ではない、ということです。シンジだってサトシと組んだタッグバトル大会の決勝戦時、エレブーへの進化によって流れを自分のものにし、相手を一発KOしました。そのためそもそもシンジにはサトシの勝利に皮肉を言う資格などまったくないものです。

 さて、この問題は微妙な問題を含んでいるので、あらためて詳しく書いてみましょう。

サトシ対シンジのポケリンガ戦とは何であったか §

 戦いの大まかな流れは以下のようになります。

  1. サトシ優勢で開始される
  2. シンジが巻き返し、サトシを圧倒する
  3. サトシのムクバードがムクホークに進化する
  4. サトシは進化によって劣勢をはね除けて互角の戦いを可能とする
  5. ムクホークのダメージは大きく、戦闘を継続できなくなる
  6. サトシの声援でムクホークが力を取り戻してぎりぎりで逆転して勝利する

 この戦いでは以下のような状況が見て取れます。

  • ムクバードとドンカラスの能力を比較すると、ドンカラスの方が格段に高い
  • 従って、最初の勢いを止められてしまうと、ムクバードはどうしても劣勢にまわらざるを得ない
  • ムクホークとドンカラスの能力はムクホーク優勢と考えられる
  • ムクホークはムクバードであった段階で受けたダメージから全力を発揮できない
  • この状況から発揮できるパワーが存在するとサトシは信じていた
  • そのパワーによって、奇跡の大逆転が起きたが、僅かでもタイミングが遅れれば逆転勝利はあり得ない際どいものだった

「運」とは何か §

 この戦いの趨勢を決める状況には以下の3つの「運」が関わっていたと考えられます。

  • 進化が起こったこと (サトシにとっては運がよい)
  • 進化のタイミングが大ダメージを受けた後であること (シンジにとっては運がよい)
  • 奇跡の大逆転が間に合ったこと (サトシにとっては運がよい)

 従って、この戦いにおいて、サトシとシンジのいずれも「運」の助けを借りていると見ることができます。

 戦いとは最終的に「時の運」とも言われるわけで、「運」が介在しない確実な勝利などというものは、ある程度以上の実力の世界ではあり得ない話でしょう。ですから、シンジに「運」は関係ない、ということもあり得ません。彼もまた「運」に左右されて勝敗を掴む者の1人です。

「運」に対する依存度の問題 §

 ここで問題になるのは、2人のスタンスの違いから発生する「運」に対する依存度の差です。

 ここで上記のリストにある「この状況から発揮できるパワー」を潜在パワーと呼ぶことにします。これは、本来ポケモン自身が持っているにも関わらず、諦めや恐怖、雑念が発動を抑止してしまうパワーです。サトシの声援で戦意を取り戻して戦う力もこれに当たるし、広い意味では進化もこれにあたります。このパワーは意識的、計画的に使うことができません。

 これに対して、通常の状態で発揮されるパワーを通常パワーと呼ぶことにします。これは意識的、計画的に使うことができるパワーです。

 シンジの戦略は通常パワーを最大限にアップすることだと考えられます。

 これに対して、サトシの戦略は潜在パワーを引き出すことにあると考えられます。

 この相違はたとえば2人のヒコザルに対する態度の差として見てとることができます。ヒコザルの猛火は、潜在パワーに分類される力です。シンジは、猛火を意識的、計画的に使用できるレベルに引き上げることを通して、通常パワーとして使おうとしていました。しかし、サトシは潜在パワーは潜在パワーのままにしておき、無理に意識的に使わせる必要はない、という態度を取っています。

 さて、両者のどちらが強いのか、というと、一般論で言えば当然潜在パワーを使う方が「強い」といえます。潜在パワーの大きさが0よりも大きければ、「通常パワー+潜在パワー」を発揮するポケモンは、「通常パワー」だけのポケモンよりも強くなります。

 従って、シンジはこの劣勢をはね除けるために、まず最初にモンスターを捕獲する段階で能力の高いものを選ばねばなりません。更に、常に強さを発揮させるための厳しい鍛錬も欠かせません。これだけやって、ようやく潜在パワーを使う「サトシ」タイプのトレーナーと互角の戦いができます。

 しかし、潜在パワーは意識的、計画的に使えません。たとえば、タイムアップ直前にパワーが発動して間に合わない、という事態もあり得るし、そもそも発動しないという可能性もあります。

 従って、潜在パワーを使う「サトシ」タイプのトレーナーの方が「より強い」という可能性を持つと同時に、「運」に対する依存度も高い可能性を持つと言えます。

敗北のリスクという問題 §

 単に強さを追求するだけなら「サトシ」タイプでも問題はありません。

 運が悪いと負けるリスクがやや高い程度であり、たいていは勝てるからです。

 ジム戦も運悪く負けても再戦できるので、これで問題ありません。

 問題は、1回でも負けるとそこで終わってしまうトーナメント方式の大会です。この場合、頂点を目指すためには「強くなる」ことだけでなく、「負けない」対策が必要となります。

 意識的、計画的に使える通常パワーだけで十分な強さを達成する「シンジ」タイプは、その点で有利です。トレーナーの指示が的確であれば、少なくともポケモンの実力が通用する順位まで勝ち上がれる可能性が高いと言えます。

 私が指摘するサトシの「運に依存する部分」の問題とはこれにあたります。

 しかし、シンジのやり方が手放しで優れているわけでもありません。対戦相手がある水準にまでステップアップすれば、「負けない」だけでは「勝てない」からです。

 はたして、この2人は最終的にどのような境地に到達するのか。シロナでなくとも、気になるところですね。

余談・「気合い」とは何か §

 このバトルでシンジは「気合いでどうにかなる状況だと思うか」と言っていますが、これは非常に象徴的です。

 これは、シンジにとっての「気合い」が、現実のパワーではなく、「願望的な夢想上のパワー」であることを示します。つまり、気合いを入れても実際のパワーは出ないと考えられます。

 しかし、サトシにとっての「気合い」は意味が違います。潜在パワーの発揮を抑止する「負の心」をはね除ける「強い心」を意味するのでしょう。

おわりに §

 というのが私の考えですが、亜麻さん、納得していただけましたか?

 ちなみに、上は全て私の個人的な感想、考えに過ぎないので信じてはいけません。むしろ間違っていると思って読むのが適切でしょう。これを読んでいる皆さんは、自分で自分の答を出すべきです。

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