37年前から始まったマジンガーZ、グレート、グレンダイザーには、当時見ていてかなり相当な不満がありました。一部は「マジンガーZへの「愛」の表明? ファン側がねじ曲げて進む「子供指向」!?」などに書いた通りです。
たとえば、子供が努力することなく特権的なヒーローの座に着くのは感情移入できません。結局、巨大ロボットを贈与してくれる血縁者の有無がヒーロー性の根拠であるなら、それを持たざる者は永遠に脇役です。
たとえば、自分になれるのはおそらく「ヌケ、ムチャ」ぐらいだろう、と思ってしまいますが、彼らはギャグ担当のボスの更にオマケです。
たとえば、たった1体のマジンガーZでは一箇所に対する攻撃にしか対処できないわけで、ドクターヘルは毎週1体ずつ機械獣を出撃させるのではなく、複数を同時に出撃させれば容易に様々な戦略的な意図を達成できるはずです。
※ 念のために補足すると、このような不満感はアニメのこれら作品にのみ感じたことで、おっぱいミサイルを掴んで戦うコミック(グレートだったか)や、ボロッ殿には感じていませんでした。あれらは好きでした。
そういう観点から見ると、実は「真マジンガー衝撃！Z編」という作品は、こういったあらゆる不満感を全て払拭した作品であることが分かって、愕然とさせられます。というか、「アニメのマジンガー」の「マジンガーらしさ」を全否定しているようなものです。(しかし、アニメ以外のマジンガーを否定しているわけではない)
たとえば、この作品には「巨大ロボットを贈与してくれる血縁者」を持たざる者達にも、活躍の場面は多くあります。というよりも、マジンガーZよりも彼らの活躍の方が割合として多いとすら言えます。たとえば、自分に担えるのは「ヌケ、ムチャ」ぐらいの立場だろう……と思ったとしても、この2人はボスと一緒にボスボロットを操縦してアシュラ男爵のミサイルを掴んで止めるという、かなり美味しい見所を担います。それどころか、くろがね屋の女将から、「やるねえ」とまで褒めてもらえます。これなら、「ヌケ、ムチャ」の立場でもこの世界に参加する価値があるというものです。
では、「巨大ロボットを贈与してくれる血縁者」を持つ者の立場はといえば、まさに彼はそれだけではヒーローになることができません。未熟を指摘され、くろがね屋の面々から見て明らかに弱く格下であり、単に「最強のロボットを所有している」だけの未熟な少年でしかありません。つまり、「こいつを鍛えねば問題は解決しない」という状況であり、いかにして彼を鍛えるかという部分で、「巨大ロボットを贈与してくれる血縁者」の有無とは関係なく、僕らの居場所は作品中にあります。
そしてもちろん、この作品では複数の機械獣の同時出撃は当たり前のように行われます。アシュラ男爵の東京、大阪、名古屋の同時攻撃+待ち伏せの伏兵という4体の機械獣による攻撃は、「少しでも知恵があればやって当然」の作戦です。
逆に、巨大な機械獣を使わない搦め手の攻撃もあるし、それに立ち向かう側も巨大ロボットを使わない等身大の戦いもあります。
更に言えば、アシュラ男爵の魅力も極めて高いと言えます。彼/彼女は無能ではありません。必死に努力して成果を出そうと努力を重ねています。それが成果に結びつかないのは悲劇としか言えません。だから、「努力が成果に結びつかない絶望感」の経験があれば、むしろアシュラ男爵に感情移入して見るということすら可能でしょう。あるいは、くろがね屋の女将に翻弄されるマゾ的快感を堪能するためにこそ、アシュラ男爵に感情移入して見るやり方すら「あり」でしょう。
いや本当にこれは驚きです。
