2009年08月19日
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「ヒカリVSママ!親子対決!!」にサトシのママが登場しなければならない決定的な必然性

Written By: トーノZERO連絡先

 2009年08月13日放送の「ヒカリVSママ!親子対決!!」ですが、これについて1つだけ書き足しておく価値があることに気づきました。

割り込んで強引に登場するサトシのママ §

 このエピソードで特に奇異に思えるのは、オーキドと電話中に突然オーキドを押しのけて出てくるサトシのママです。

 この展開が物語の設定上おかしいとは言えません。しかし、ヒカリのママと決まり切った挨拶を行うだけであり、この先の展開に関して何か特別な示唆を行うわけでもないし、ママとサトシの関係の決定的な変化を告げているわけでもありません。また、ここで視聴者に復習させるような特別な関係も示されません。

 しかし、「ヒカリのママ」あるいは「ヒカリとママ」の関係を際だたせるという効能を想定すると、サトシのママは登場しなければならなかった、とも考えられます。

2つの親子関係 §

 「ヒカリVSママ!親子対決!!」でのヒカリとママの関係は、友達のように過剰に親しい、と描かれているように思えます。しかし、この点はうっかりすると見過ごされかねません。単に、久々に会った親子がスキンシップしているだけ、と受け止められる可能性もあり得ます。

 しかし、そこでサトシのママが息子を突き放すような言い方で息子との距離感を示すことで、ヒカリとママの距離感が過剰に近いことが印象づけられます。

あるいはもう1つの関係 §

 別の見方をすれば、この差は「ママと息子」「ママと娘」の関係の違いを示す、とも言えます。つまり、「ママと息子」とは常に一定の距離感を持つものであるのに対して、「ママと娘」は、娘がある程度の社会経験を積んだ時点で親しく接近しうる、という違いが描かれたとも言えます。

 しかし、接近しすぎた「ママと娘」の関係が常に良いものとは限りません。これが、ヒカリ母娘が抱えるある種の問題、あるいは試練だとすれば、これはアニメ・ポケモンがこれまで描いたことのない、全く新しい展開と言えるのかもしれません。

余談 §

 ……という話は、実はヒカリとハルカに決定的な違いが存在することも示します。ハルカのママは、まだまだ子供であるマサトや愛する夫を持っていて、親しく娘を身近に置く必要性を持っていません。それに対して、家族といえるのは娘1人だけであるヒカリママは、娘によって肉親に対する寂しさを埋め合わせるしかありません。

 その結果として、ハルカはひたすら外に向かって自立していく方向性で進んでいくのに対して、ヒカリは社会的な自己を確立することでママに対して回帰していく……あるいは、ママに対して回帰するために社会的な自己を確立するために旅をしているとすら見えてしまいます。

 しかし、本来はそうではなかったはずです。

 はたして、この母娘関係にどのような決着が付くのか見守りたいと思います。