最近、水路河川や、その跡に沿った位置に変電所が多いことが気になっていました。
たとえば井の頭線の駒場変電所は河川跡と線路に挟まれた空間にあるし、東電の淀橋変電所は神田川と神田上水助水の合流点にあります。
他にも事例は山ほどあります。
たとえば、予想もしなかった事例がこれです。
夏の内川探検 (03)より
大田区馬込。JR東日本の変電所にやってきました。
‥‥いえ、鉄趣味に走っているわけではなくて。
この、アスファルトが変なふうに欠けているのが内川の流路跡なのです。
まさに河川跡と変電所が隣接している事例です。
しかし、変電所は水を使う施設ではありません。水冷という話も一般的ではないようです。(冷却にはオイルを使うらしい)
しかし、サルマルさん主催の鉄塔ウォークで興味深い示唆をいただきました。
つまり「アース(接地)」であると。
以下、素人がいい加減に書き飛ばすので信じてはいけません。
接地抵抗という問題 §
変電所はアースを取らねばなりません。
その際、接地抵抗はおそらく湿った土地の方が低くなるはずです。当然、接地抵抗が低い方が効率が良いと考えられます。
さて、以下は直接的には関係ない文書ですが、"変電所 接地抵抗"で検索して出てきたものです。
変電所接地設計の新手法 深井戸電極削減に向けた架空地線分流率の見直し (中央送変電建設所 設計技術G)より
研究の背景
近年、系統拡大による地絡容量の増大、GIS化による変電所敷地面積の縮小、固有抵抗の高い山岳地への変電所建設といった要因により、メッシュ電極の対地電位上昇限度をクリアするための接地抵抗を確保することが困難となってきている。この対策として従来、深井戸電極の打設を実施してきたが、高コストが難点であった。
ここから読み取れることは、以下の点です。
- 変電所にとって接地抵抗は高コストを費やしても確保すべき重要な問題である
- 高い山岳地は(おそらく湿った低地と違って)接地抵抗が高い
- 必要な接地抵抗を確保するために広いメッシュ電極を地下に埋め込んでいる
- 接地抵抗を下げるためには、深井戸電極の打設が行われる
要約すると以下の通りです。
- 変電所には外部から見えない地下の仕掛けがある (メッシュ電極、深井戸電極)
- 水から離れた高地の変電所であっても、深井戸電極という形でやはり水に対して接続されている
つまり、おそらく接地抵抗が低いであろう河川水路沿いに変電所を建設することは合理的な選択であり、従って河川水路やその跡を辿っているとしばしば変電所に遭遇するのは当然の帰結であると言えます。
また、鉄道会社の変電所が河川水路(跡)と線路に挟まれた土地にしばしば見られることも合理的な選択だと言えます。接地の都合と鉄道に対する電力供給の合理性を追求すればそうなります。
もう1つ。玉川上水旧水路脇に存在する京王の天神橋変電所の立地も合理的に解釈できます。給水、排水のために水路を使うとすれば、いかに現役ではないとはいえ「上水」は簡単に使えなかったでしょう。しかし、接地抵抗という観点で見れば給水も排水もしないので問題ありません。湿った土地さえあれば良いのです。
逆に、接地に対する技術が向上した後は、それほど河川水路沿いにこだわる意味はなく、送電や土地取得の都合に合わせた場所に変電所を建設するケースが増えたとも考えられます。たとえば比較的新しい井の頭線の久我山変電所は高圧送電線の真下にありますが、これは送電の都合で場所が決まったと考えられます。
感想 §
目には見えない地下構造を想定しなければ解けない問題……だったようです。
うーん、奥が深い。
地面の底も奥が深い。