「杉並区立郷土博物館 研究紀要別冊 杉並の地形地質と水環境のうつりかわり 杉並郷土博物館」は興味深い記述の多い本です。中でも「(図52) 武蔵野台地の谷系・凹地分布」よりの以下の部分です。
分かりにくいので色を付けます。(実線は水流のある谷、波線は浅いゆるやかな谷です)
青い線はたぶん神田川です。赤い線はたぶん玉川上水下高井戸分水の一部です。
この2つの線から以下の2点が示唆されます。
- 神田川の流路は厳密に固定されたものではなく、現在想定される支流も人工的なものだろう
- 玉川上水下高井戸分水の一部がどうやら自然河川として図に記載されているようだ
他にも興味深い実線、波線がありますが、重要なポイントは以下です。
- 玉川上水下高井戸分水の終着点は神田川の向陽橋付近であった、という状況を否定できなくなった
もちろん、昭和20年代の航空写真では「神田川の支流」に接続されていて、現在の跡もそうなっていますが、ここも人工的に手が入っているようです。本来、神田川本流に接続されていた可能性も否定できません。地形的に現地を見てもそう思います。
余談 §
以下の点もあります。
- おそらく2本の自然河川に挟まれた位置が下高井戸八幡神社である
軍事的、経済的に重要です。水のある低地とは収入源であり、かつ、戦えば2方向に有利に守れます。やはり、太田道灌が勧請したといういわれは嘘ではないのかも。
とすれば東に細長く地面が続く今の状況よりも、東も自然河川で区切られていれば2方向より3方向となり、有利度はアップします。これが自然河川としての下高井戸分水が向陽橋で神田川本流に接続している理由ともなります。