A君の最後の肉親であるおじさんが天にめされました。
A君はこれからどう生きていけばいいのか途方に暮れました。
しかし、1つだけ遺品があることが分かりました。それはロボットでした。
「おいロボット、おまえは何ができる?」
「バルブを作れます」
「料理は?」
「できません」
「洗濯は?」
「できません」
「掃除は?」
「できません」
「いいよ。バルブを作って売ってきてくれ」
「作るだけで売れません」
「しょうがないな。作ってくれよ。オレが売ってくる」
しかし、ロボットが作ったバルブを街に持っていくとバカ売れしました。A君は大金をせしめて帰りました。
「これからも、じゃんじゃんバルブを作ってくれ」
「はい、ごしゅじんさま」
A君は働かずにすぐ大金持ちになりました。
しかし、都合の良いことは長続きしません。ロボットは壊れてしまいました。直そうにも死んだお爺さんの手作りで図面も無く、誰も直せませんでした。
A君はあっという間に貧乏に逆戻りです。
「ははは。まあいい夢を見たと思ってあとは地道に働くか」
ところが、すぐに地道には働けないことを思い知りました。
「バルブが弾けた! 水が止まらないよ!」
売ったバルブには欠陥があり、故障するごとにA君は呼び出され、修理をさせられたのでした。毎日どこかに呼ばれるほどでした。売ったバルブの数は膨大だったからです。おかげで、地道に働く時間もありませんでした。
おわり
(遠野秋彦・作 ©2010 TOHNO, Akihiko)