「アリス・イン・ワンダーランド」の特徴は、「戦うヒロイン」であろうと思います。しかし、戦う根拠は持っていません。
その点で、私が今時のトレンドと見なした以下の2つの特徴のうち、片方しか満たしません。
しかし、実は「不思議なことが起こる」という設定を加味し、戦いが不思議であると想定すると、むしろ「戦う根拠を持たないアリスが戦いに勝つ」ことが、作品の要になります。
とすると、もう1つ興味深いことが出てきます。
ワンダーランドでのアリスに戦いはいったい何かということです。
つまり、これは自立する女性の闘争ドラマであり、本当の敵は「常識」です。常識と戦うために、戦える根拠は必要ありません。
その結果、アリスの敵は怪物であり、寓話的な存在へと姿を変えます。
そして、決別すべき理想のハンサムも夢想の世界に残し、アリスは現実に帰還します。
そうか §
とすれば、この映画はディズニー版の「千と千尋の神隠し」であると位置づけて良いのかも。
- 不思議な世界に迷い込む
- 迷い込むにあたって、さしたる理由はない
- 敵は姉妹の魔女
- 悪の魔女の領域から善の魔女の領域へと移動する
- 常に名前が問題にされる。千尋という名前は奪われ、常にアリスであるかが問題にされる
- 悪の魔女が持つ凶悪な敵も味方にしてしまう
- 女性主人公のことを昔から知っているハンサムな男が最大の味方になってくれる
- そのハンサムとは最後に別れる
戦うヒロインではない千尋は、武器を持って龍とは戦いませんが、アリスは竜と戦います。ここは、「戦うヒロイン」という新しいトレンドによる要請で変化している部分かもしれません。とはいえ、竜≒龍という似たモチーフも出てきます。
もう1つ、ヨモギの実を食べさせるために龍の口に手を突っ込む描写と、猛獣の檻で目玉を返すシーンもある種の相似と言えるのかもしれません。
しかし、親の扱いに相違があり、時代背景も違い、帰還後の主人公の変化も違う点が、ディズニーらしい違いの発露と言えるのかも。
面白いぞ §
というわけで、この映画は分析(もどき)しても面白いぞ。