「顔が見えるヤマトと見えないガ○ダム論で以下のように書いたね」
「ともかくさ。ヤマト後の時代といえば、テッカマンよりBD7の少年探偵団の方が面白いや、とこちらは思ってしまう」
「明智君も小林少年も顔が見えるね」
「怪人20面相は変身するが単に別人の顔から正体を現すだけだ」
「そうか、自分の顔で勝負するからかっこいいわけだね」
「敵も味方もな」
「そうか。だから、そういうのを見られるわけだ」
「うん、あのポケットにミクロマンのエスカルゴのパーツ、絶対全部入らないだろ、とか思いながらね」
「ヤマトにブラックタイガーも全部入りそうにないしね」
「たしかに」
「ちなみに、三代目明智小五郎~今日も明智が殺される~、なんていうのも、今でもたまに見てるしな」
「深夜アニメすっかり見ないと思ったら、そんなものを見てるのか」
「毎回じゃなくて、たまにだけどな。33分探偵もたまに見てたし」
「うん」
「実ははたと気づいたんだ」
「というと?」
「オレの嗜好は何かってことだよ」
「推理ものって意味?」
「いやいや。ここにもう1つのピースを当てはめるともっと分かりやすくなる」
「これは何?」
「子供の頃に面白かった本だ。20面相のような怪人を追いかけていくギャグ小説だったと思う。ともかく笑えた」
「えっと。ということは?」
「あまり本格的でも真面目でもない推理ものに対する趣味が子供の頃からあって、それがそのまま33分探偵や三代目明智小五郎に続いていると考えると分かりやすい」
「なるほど」
「だから火曜サスペンス劇場は別に見てないわけだ」
「そうか。あくまでギャグ系なんだね」
「真面目に格好を付けたヒーロー的な探偵は面白くない」
「なるほど」
「だかさら、たとえば三代目明智小五郎のあとの時間にやってるけいおんは興味も無いし見たこともない。たまたま放送している時間が連続しているから、番組表でそういうアニメが放送されていることは知っているが、見たいという意欲は全くない」
「見る時間があったら?」
「三代目明智小五郎の方を見る。けいおんは見ない。まあそれ以前に、意味不明のひらがな4文字系タイトルは避けて通る習慣ができているしね」
「けいおんって軽音って意味じゃないの?」
「さあ、ぜんぜん知らない。そういう系統のサークルに入ったこともないし」
「話が続かないね」
「うん。だから話を戻そう」
「どのへんに戻るの?」
「だからさ。子供時代、本格的な推理よりも、その周辺の方向に興味が向いていたのも無理はない。ギャグじゃないけど怪奇大作戦とか10-4 10-10とかも見ていた記憶がある」
「なるほど」
「子供の頃、本を読んでもさ。凄い名探偵のホームズより奇岩城が好きとか」
「ホームズが活躍してくれない小説だね」
「だからさ。そういう系譜の流れとして、今ここに出てくるのは33分探偵であり、三代目明智小五郎なんだよ」
「なるほど」
「でも、意味不明のひらがな4文字系タイトルは出てこないんだよ。この流れの上に無いから」
「しかしさ。けいおんはアニメだけど、三代目明智小五郎は実写なんだろう?」
「うん」
「それでいいの?」
「いい。なぜなら、この流れにアニメという要素は実はほとんど無いからだ」
「え?」
「強いて言えば、タイフンホラマーがアニメだったりするが、割合としても小さい」
「ホラマーって」
「だからさ。この流れを追いかけていくとき、そこにアニメはほとんど無いんだよ。もともとも小説や実写の世界なんだ」
「そうか、子供の頃の元からそうなのか」
「そう考えると、探偵の活躍する京極夏彦作品を読んでいるのも当然の流れだね。これは推理というには周辺領域に相当する」
「なるほど」
「格好いい探偵を出して格好良い活躍をさせない森博嗣作品とか」
「なるほど。そういう方向に行く訳ね」
「でも、その方向にアニメという要素は希薄だし、まして意味不明のひらがな4文字系タイトルとはつながらない」
「封印再度とか赤緑黒白とか、意味不明の漢字4文字のタイトルはあっても」
「うん。アニメとはつならがない」
「スカイ・クロラはアニメ化されたよね」
「もう推理系じゃないし。そもそも、オタク界の流行を無視してばく進して何とも思わない原作者に監督だからね。メイドは出ないが娼婦は出てくる」
「客もそうだね」
「うん。こちらも、オタク界の流行を無視して劇場に見に行く客だ。というか、そもそもオタク界の流行なんて意識するほどの価値も無いぐらい矮小なものだろ」
「実社会ではあまり影響力無さそうだね」
「ちなみに、小鳥遊練無は明らかにオタク界の男の娘の流行をむしろ先取りしているような感じもあって、むしろどちらが流行を先導しているのかという話になる」
「小鳥遊練無ね。読み方は、たかなしねりな、だっけ?」
「そうなりね」
「実は、最初に先行して出てきた短編で、女装少年であるという設定が伏せられて、女であるとミスリードするように文章が書かれていたが、気になって読み取って女装であると見抜いたのがちょっとした自慢かな。本当にちょっとだけど」
「そんなに女装が好きなの?」
「いや、実はこの短編。小鳥遊練無が鉄道模型の機関車をもらう話なんだよ。なので、ちょっと気になったというのが大きいかな」
「そうか。鉄道模型の機関車に興味を持つ女の子ってどんな子だろうと思って読み直すと……」
「いや、女の子より鉄道模型の機関車だ。って、そうじゃなくて。実は性別が明示してなかった。しかも、間接的に男の子であることが示されていた。しかも性別が巧妙に隠されていた。慎重に立ち止まって文章を吟味しながら読む者にしか分からないように書いてあった」
「ははは。大きな落とし穴だね」
「いいんだよ。そして二人だけになった、だっけ? 最後の結末で愕然としたし。ぜんぜん2人になってないし。これも落とし穴だった。主人公に感情移入して読むと足下をすくわれる落とし穴だ」
「そうだね。2人と思わせてそうじゃない」
「そうか。最近でも映画でシャッターアイランドを見て、あれで喜ぶというのも同じなんだ」
「というと?」
「あれも格好良い探偵のヒーロー性の否定だからな」
「結末直前まで格好良い保安官に見えるのにね」
「オチで全てひっくり返る」
「だから、この路線にアニメの要素はほとんど無い。アニメなら見るとか、アニメじゃないと見ないとか、2次元美少女が出ないと見ないとか、そんな話はさっぱり無い。もともとそうじゃなかったからだ。BD7の少年探偵団からして実写だったわけだし」
「アニメブームがあっても?」
「そういうブームとは関係ない嗜好なんだろうね」
「なるほど」
「いやむしろ、アニメでは無理なのかもね」
「というと?」
「だからポリマーが主役でホラマーは1回限りのネタってのがアニメの世界だとすれば、どうしても正統派のヒーローが主役に座り、ホラマー型はマイナーな脇役になる。しかし、一歩アニメの世界を抜け出せば、ホラマー型が主役に座れる世界もごろごろあるってことだ」
「なるほど。それが三代目明智小五郎ってことだね」