2010年09月21日
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感想・映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』

Written By: トーノZERO連絡先

 映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』を見ました。ガンダムの賞味期限はとっくに切れていると思うので、普通なら見ないのタイトルです。映画なら洋画でも邦画でも何でも見る雑食系でなければ、スキップしているところ。しかし、どちらかといえば、断末魔のガンダム現象を見に行ったのであって、映画を見に行ったわけではありませんでした。

思えば遠くに来たもんだ §

 ええ。TVシリーズのガンダム00はけっこう評価していたつもりです。しかし、ガンダム00放送終了からこの映画までの期間に状況が激変しました。アバターを始めとする3D映画は増えるし、アリス・イン・ワンダーランドのように実写とアニメの境界が曖昧になるような映画も続々と出てきてアニメの立ち位置が曖昧になるし、ヤマト復活編も公開されちゃったし。もう同じ立場で見ることはとてもできないぐらい、状況が激変してしまいました。

観客が違う §

 いきつけの劇場を決めて通うメリットが良く分かりました。客層の違いがはっきり分かります。明らかにオタクっぽい男ばかり。いつもと違います。

 それからガンダムグッズも売店で売ってました。劇場から見てそれなりに儲けさせてくれるタイトルだということが分かりますが、その割に宣伝に力が入ってません。松竹系じゃなくて東宝系の劇場の扱いはそんな感じなのでしょう。

 ガンプラも売っていましたが、実はその裏側で海猿の巡視船(ピットロード製)の模型も売っていたのはびっくり。いやー、こんなところで、ピットロード製品を見るとは。

ガンダムいらない §

 というわけで、実際の映画ですが。

 モビルスーツの戦闘つまらないな、と思いながら見始めるとそれはただの映画内映画。そこからはガンダム抜きの映画が続き、話はロボットチャンバラではなく、ファーストコンタクトへ。後半になると、まあガンダムも出てきますけど。前半は完全にガンダムをあえて出さないソレスタルビーイング。

 序盤の話をすれば、明らかにモビルスーツ戦は面白くも何ともありません。鉄道車両の衝突事件の方がずっと面白かったぐらい。

 結局、この映画にガンダムがいる必然性は何もありません。モビルスーツも。シナリオをガンダムに抜きに改変することも、ガンダム00の映画版ではない立場に改変することも容易でしょう。

 つまり、ガンダムの賞味期限は既に切れていますが、この映画はその前提で実はガンダムはどうでもいい状況で作られたものでしょう。

ファーストコンタクト §

 この映画はファーストコンタクトがテーマです。

 ファーストコンタクトというのは、未知の知的生命体との遭遇を意味します。

 ならば、宇宙からの侵略者を大量に迎えているアニメはファーストコンタクトの宝庫かといえばそうではありません。常識で理解できる相手は「未知」とは言えないからです。たとえば、以下のような「宇宙人」が地球に攻めてきてもファーストコンタクトとはいえません。

  • 人間型、既知あるいは想像上の動物型、ないしその亜種
  • 人間の常識が通じる
  • 人間の価値観で考える
  • 人間と会話できる

 だから、そもそも人間と同じような炭素系である必然性すらありません。

 だから、金属生命体として意志があるのかすら分からない相手として登場するこの映画は、紛れもなく本物のファーストコンタクトです。これは、アニメにあってはほとんど前例のない快挙です。

金属生命体 §

 母星の中で金属生命体が誕生し、そして超新星爆発から逃れて脱出したという描写も見事ですね。こういうストレートな描写はあまりありません。しかも説明もありません。ある意味で、小説SFであれば定番といえますが、アニメでやったのは快挙でしょう。すばらしい!

まとめ §

 実は、同じ水島精二監督の「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」をたまたまTVで見たときはあまりに凄くて最後まで見てしまいましたが、実は「ハガレン」の映画である必然性がほとんどありませんでした。ナチス勃興期のドイツを舞台にしたいい歴史的な映画でした。今回もそれと同じ。ガンダムである必然性がありません。結局、映画を作るための資金を得るための「家賃」として「ハガレン」なり「ガンダム」なりのタイトルの映画を作っているだけじゃないか、という気もします。まあ、それはよくある話で、押井守監督も資金を得るためにヒット作の続編の形態を取りつつ全く違うイノセンスを作ったりするわけですね。

 だから、そういう意味で、ガンダムとかモビルスーツ抜きならもっといい映画になったろうと思いつつも、まあしょうがないのかな。

 しかし、本当にまともなファーストコンタクトものを映像化したことはよくやったと思います。侵略者が一言もしゃべらないどころか、意志があるのかしら分からないという状況をきちんと描いた気骨はえらい! そんな映画をまさか見せられるとは思わなかったぞ! (もっともガンダム映画を見に来たオタクがどこまでそれを分かったかは分からないけどね)

2010/09/27追記 §

 なぜか読みに来る人が多いので追記。いずれまた詳しく書きますけど。

  • 予告編に大きく「完結編」 (旧ヤマトシリーズの最終作はタイトルは完結編)
  • 最後にトランザム (ヤマト完結編でヤマトが沈んだ後アクエリアスの海岸にみんな走ってくるところで流れる歌を歌っているのがトランザムという歌手グループ)
  • タイトルの最後が"blazer" (ヤマトのアメリカ版のタイトルはStar Blazers)
  • 全く異質で固有の形状を持たない敵 (ヤマトを腐食させるガス生命体が出てくる)
  • (他にもいろいろあるのは別途書いた通り)

 たぶん、ヤマトを意識してますね。ガンダムファンよりヤマトファンを意識してますね。ガンダム00ファンはもちろん意識してますが、キャラのファンのみ。MSのファンはあまり意識してません。また、ファーストガンダムのファンは眼中になくて、おそらくアピールしたいのはむしろヤマトファンかもしれません。

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