「うかつだったなあ」
「なにが?」
「以前話題にした無時間性の病理とアニメの関係は大ありだったのだ」
「ええっ? どうして?」
「アニメとは基本的に3次元なんだ。平面の絵に時間軸が付く」
「けして、連続した2次元の絵じゃないってことだね」
「理屈では、止まっている絵を連続させると動いて見えるというが、2次元の絵の束とアニメーションは違う」
「うん。漫画家集めてたくさん絵を描いてもダメ、って事例はあったそうだからね」
「従って、アニメーションは動きであり、演技があって初めて成立する」
「そこを見ないとアニメーションを見た意味がないってことだね」
「でもさ。時間という概念が消えている人たちは、そこが見えないんだよ。構造的に」
「静止画の集合体に還元して把握しちゃうってことだね」
「だから動いて無くてもいいんだ。絵が綺麗なら」
「リミテッドアニメ万歳だね」
「珍しく予算を掛けて動くアニメを作ると気持ち悪いと思ってしまう。いや、それ以前に似てないと文句を言うだけだろう」
「動かすためのデフォルメも受け付けないわけだね」
「動かすという概念が存在しないからだ。無時間とはそういうことだ」
「ならばさ。CGとCGAの違いって意識されないんじゃない?」
「だろうね。動かすことにこだわったCG Animation略してCGAという概念は彼らには意味不明だ」
「なるほど」
「だからアニメーターに漫画を描かせるモーション・コミックは続かないが、声優雑誌はいくらでもビジネスができる。モーションつまり動きは客層にアピールしなかったわけだ。当たり前だ。動きに魅力を感じられないからだ。声優はアイドルになれたが、アニメーターはヒーローになり損ねた」
「そのへんは、いろいろ他の問題もありそうだけどね」
「うん。アニメーターはストーリー作りが不得手で面白くならなかったとかね」
「人気アニメーターを監督に据えた企画がこけまくったこともあったね」
「そういう意味では、特定の職種をヒーロー扱いする方法論の全てが間違いとも言える、余談だけどね」
「全員野球がアニメだってことだね」
「そうだ。野球は4番サードだけでやってるわけじゃない」
「声優を特別扱いするのも良くない風潮だってことだね」
「だからさ。職種を取り払って全てのスタッフをあいうえお順に列挙するポニョのEDは正しいと思うよ」
だから §
「というわけでオーガス02はヒットしない」
「なんで?」
「主題歌で時間という概念に手を振ってしまうが、購買層のオタクはそういう概念が分かりにくいからだ」
やっと本題 §
「だからさ。動くという概念が分からないとヤマトは分からないんだよ」
「ええっ?」
「特に予算が増えた後期ヤマト」
「どういうこと?」
「ヤマトよ永遠にでイカロスからの発進とか、よくもまあ予算をつぎ込んだものだと思うほどよく動いてるけど、そういう部分で喜べない。完結編でヤマトが登場したとき、上下に煽られながら飛ぶヤマトを見て、おおっと思うことはできない」
「なるほど」
「だから、初期の動いているようであまり動いてないヤマトの方が彼らにはアピールする」
「それで?」
「後期ヤマトは意味のない変なことに金を使って間違ったアニメを作っているとしか思わない」
「でも、それって凄く貧困な感想じゃないか?」
「時間という概念に手を振って笑えない連中は、どうせそんなものだ」
「頭脳の奧にアクセスしたいね。どんな構造になってるのか」
「彼らの知識は断片を照らすのだけど、それは断片に過ぎないから謎が謎をいざなってしまう」
「知識が多くてもダメってことだね」
「たぶん立体として捉えられないほど貧困な構造しかないんだろう。平面の2次元の女が好きだしね。右の目で見ても左の目で見ても」
「ってネタが難しいよ。全部ネタなのにマジと受け止められて馬鹿にされたと思われたらどうするのさ」
「だから、馬鹿にされたと思うタイプは読まずとも理解していると思い込んでいるので、そもそもこんな文章を読まないだろう。だから心配の必要はナッシング」
オマケ §
「というわけで、2次元女大好きな困ったチャンにはどうしたらいい?」
「そうだな。じゃあ、まずプルル看護長を用意する。まあケロン人の女なら誰でもいいが」
「それで?」
「白いTシャツを着る」
「次はどうする?」
「転ぶ」
「オチが見えたぞ。平面ガエルのできあがりってか?」
「根性根性、ど根性でい!」
「1つ言っていいか?」
「なんだい?」
「きっとそのネタ古すぎて分からないぞ」
「はーっはっはっは」
本文に少し戻る §
「だからさ。無時間の病理というのは必然的に時間軸のある媒体を語れないわけだ」
「それがアニメってことだね」
「映画もそうだね」
「なるほど」
「だからさ。映画館に通うという行動も理解できない。それが楽しいことだと言うことも分からない。映画を見まくった映画少年だった押井守も分からない。あくまで映画を作っている宮崎駿も分からない」
「そしてヤマトも分からないってことだね」
「ヤマトは破格の予算で複雑なヤマトをまがりなりにも動かして見せた動きの野心作なんだが、もちろんそういう側面は見えない」
「それじゃヤマトは楽しめないね」
「うん。趣向が目に入らないのでは、先に進めない」
「そういうと、彼ら怒るよね」
「趣向を理解する知識が無いことを差別するなって」
「そうそう」
「でもこれは知識の問題じゃないんだよね」
「じゃあ何の問題?」
「病理の問題。健全な一般人は見たら分かるんだよ。知識なんてなくてもね」
オマケ02 §
「オーガス02なんだけどさ。実に素晴らしい作品だったよ。金は戦場に埋まっているなんて、そう簡単に言えない台詞だよね」
「それで?」
「つい思い出して、主題歌再生しちゃった。サントラCDはMP3化してあるからサーバからすぐ再生できる」
「そんなことをなぜいちいち書くの?」
SOUNDTRACK についてより
だいたいオーガス02のサントラを持っている奴なんて皆無に等しいんじゃないのか?
もしかしたら、ファンの間でも存在自体知らないなんてこともあるんじゃないか?
「主題歌聞きながらこれを読んでのけぞったぞ。ははは、おいら皆無に等しい人の1人だったらしいぞ」
「それって自慢?」
「ぜんぜん自慢にならんぞ。経験として抱きしめることができるだけだ。いますぐにな。でも、そんなにレアとは知らなかったな」
「言いたいことはそれだけ?」
「いやいや。だからさ。それだけ作品としてマイナーだったということだ」
「でも素晴らしかったんだろう?」
「素晴らしい作品をヒットさせる力を購買層は持っていなかった、ということだ」
「ガンダム0080は売れてもオーガス02は元ネタの知名度と人気から売れないってことかな?」
「さあね。でも、旧作オーガスとは全くの別物だったよ」
オマケ0080 §
「いや。0080って書いたからついでに書くけどさ」
「うん」
「オーガス02と同じ監督の作品だけどさ。昔は子供に見せる価値がある唯一のガ○ダムと思っていたほどだ」
「それがどうしたの?」
「戦闘機が学校の上を通過して、思わずあとを追いかけてしまう生徒の少年っていう構図は明らかに戦中派の発想だと思うな」
「かつては実際にあった光景ということだね」
「だからさ。少年が異世界に召喚されてロボットに乗るのは平和ボケした自称マニアの発想。そうじゃなくて、退屈な学校生活で突然戦闘機(実際はザクだけど)が落下しながら頭上を飛び抜けて授業どころではなくなるのが戦争をリアルに感じられる世代の発想なんだろう」
「それはヤマトにも通じるね」
「戦時下という空気感がある」
「世界中の支援でヤマトは綺麗に旅立つけど、地球の実態は相原の通信でかなり悲惨だと分かる」
「やはりそこだよね」
「きれい事のヤマトだけ見て批判をしても説得力がない。本人はいいことを言っているつもりなのだが、実態とかけ離れているから白けちゃうだけだ」
「裏にうごめくどろどろした部分を見ないとね」
「うん、それを見てこそのヤマトだ」
「左翼っぽい人に多いのかな」
「実は大和万歳の右翼っぽい人もどろどろを見てないぞ」
「右も左も極端になると、アニメを見るより自説に結びつける方を優先してしまうってことかな?」
「さあね」
オマケの恩返し §
「という原稿を書いてから公開する間に、テレビで猫の恩返しをやっていて途中から見てしまったのだが」
「うん」
「ハル、自分の時間を生きるんだという台詞でのけぞった」
「ははは。まさにこういう話題だね」
「結局、猫の国には時間という概念がないんだ」
「時間は流れているけどね」
「でも、猫王が適齢期の王子がいるのにハルを后に迎えられるのは、やはり無時間的な世界なんだよ」
「なるほど」
「だから、そういう世界をダメだと言って救い出す話は、実は間接的にオタク批判を形成しているとも言えるわけだ」
「でも、主人公は猫になってもいいかも、と思ってしまう」
「うん。だから、これはオタクになってもいいかも、と思う若者への警鐘なんだろう」
「ひがな一日、ゴロゴロ過ごして働かず、面倒くさい他人とも会わず、仕事もしないでアニメ見て、ネットゲーして、マスをかく安楽な生活は確かに魅力があるのかもね」
「でも、その魅力はまやかしだ。そういう生き方は過去の資産の食いつぶし以外の何者でもないが、資産は無限にあるわけではない」
「そういう人はヤマト世界に居場所はないね」
「そうでもないさ」
「ええっ? どこに居ればいいの? 何班?」
「いやいや。街頭のテレビを見ていてやばくなったら、ヤマトを出せ!って文句ばかり言う一般人さ」
「わざわざ苦労してテレザートまで行ってきたヤマトの状況も知らないで文句ばかり。自分は何もしないのに抗議ばかり」
「たまには優しい言葉も聞きたいよね、スターシャ」
「いや、それはいいから」