「やっぱ警官は人命尊重を貫いとくもんだ。土壇場で大正解。野明の足の下だよ」
「は?」
「無駄だと思っても筋を通しておくといいことあるよ、と言いたいらしい」
「なにそれ?」
「赤坂サカスの15mヤマトにはこれまで4回行った。初日の初回。通常のケースで2回。イベントで1回。しかし、完全燃焼するには既にネタは分かっていても最終日の最終回を見なければならないと思った」
「でも、結局内容は同じでしょ?」
「そう思うだろ?」
「違ったの?」
「イエース」
「どういうこと?」
「順番に語ろう」
準備 §
「SPACE BATTLESHIP ヤマトのサントラを聴きながら待ちたいと思った。だから、既にサントラは某社の携帯音楽プレイヤーに同期済みだった」
「そうか」
「というわけで、赤坂サカス15mヤマト最終回である12/4の21:00の波動砲発射の迎撃準備は出来ている……はずだった」
「というと?」
「家を出て、さて聴きながら行くかと思って画面を点灯させると、なんと音楽が1つも見えない」
「ええっ!?」
「ファームのアップデートを入れたら音楽が消えていた」
「酷いね」
「慌てて家に引き返してパソコンと音楽の同期をやり直しさ」
「それで?」
「なぜかゲームだけ同期したら音楽が全て復活した」
「良く分からないね」
「おかげでゆとりが消し飛んで、ひやひやしながら赤坂に向かった」
「間に合ったの?」
「結局、約10分前に赤坂駅に到着できてホッとした。しかし、実質的にほとんどぎりぎりだな」
「そうか」
「しかし、赤坂駅で思った。まだ油断してはいけない。百里の道を行く者は九十九里をもって半ばとせよ。佐渡先生のありがたいお言葉だ」
「それでどうなったの?」
「警告は大正解。出る改札間違えて凄い大回りを要求された」
「やはり油断は禁物だね」
「慌てて移動して間に合わせたよ。緊張を解かないで良かった」
新たに分かったこと §
- 3分前と1分前に大スクリーンに予告が出ると書いたが、5分前の告知もあった
- ヤマトを見る良いアングルは実はけっこう多かった。ポイントは思いっきり引くこと。つりこまれて前進しすぎてはいけない
- 汚れのおかげで、見応えはぐっと良くなっていた。最初に見た印象とは違う
ついに発射 §
「だがしかし、ここで今までにない新展開が」
「なに?」
「スタッフがヤマトの前でスモークを準備中だった」
「ええっ!?」
「波動砲発射口のレーザーはもちろん目に見えない。だから見えるためには、スモークや霧が必要なんだ。でも、波動砲から噴き出すスモークだけではすぐ拡散して遠くまで届かない。いくらレーザーが遠くまで届いても意味がない」
「ってことは?」
「凄いぞ。今までの数倍以上の距離が伸びた」
「それは大したものだ」
「しかも、何回も波動砲からのスモークの発射をやってレーザーも長時間照射し続けた。まさに最後の最後の大サービスだ」
「すげえな」
「予想外のサービスだ。集まったファンも大喜びだ (たぶん)」
「サービス満点だね」
「ちなみに以下の写真は分かるかな。緑の光が、ヤマトが写真のフレームに入らないぐらい遠くまで伸びていた」
「以下の写真を見るとここで切れているように見えるけど、煙にムラがあるからで、もっと先まで伸びていた」
「最も長く伸びた時で、観客達の真上を超えていたんじゃないだろうか。気付いてない人も多かったみたいだけど」
解体ショー §
「そのあと、ヤマトの背後にクレーン車が止まっていた。これで釣り上げて撤収するのかと思ったが違った。これは関係なかったらしい」
「そうか」
「しばらくして人が減ってから、作業空間を柵で囲って、ヤマトの解体が始まった。その結果分かったのだが、実は予想以上に15mヤマトは軽い」
「そんなに?」
「ほぼ全て人力で解体された。しかも、ほぼ全てバラバラになった午後11時まで粘って見ていたが、21:00に最後のレーザーショーを行って、人が減るのを待ってから始めたのに23:00の段階でほぼ完全に解体が終わっていた。一部は既にトラックに積み込まれていた」
「へぇ」
「あと15mヤマトのサイズの根拠が分かった。中に人が通れるメンテナンス用の通路がある。このサイズからヤマトのサイズが決まっているようだ」
「そうか」
「後部が埋まっていて省略されているのも、太さを確保しながらサイズを抑える工夫のようだ」
「賢いのだね」
「あと、周囲の岩も発泡スチロールだったようだ」
「軽いわけだね」
「背景の絵は布だったようだ」
「そうか、布なら丸めて小さくして持ち出せるね」
「解体ショーの詳細は、膨大な写真を撮ったが、量が多いので整理に時間が掛かる。またあとで取り上げたいと思う」
「頼むよ」
しかし §
「佐藤直紀が音楽を手がけたマシンロボレスキューの話をしたばかりだが、今回は本当に連想した」
「どこが?」
「作業用の白い車が3台並んでぴたっと綺麗に並んで止められていたが、本当にエイダーロボみたいだよ」
「エイダーロボ、2番から4番、よし! という感じだね」
「そのあと、人を排除するために設置した柵の一部は赤いリボン。まるで、KEEP OUTと書かれた黄色いリボンのよう」
「ははは」
「で、その後で入ってきた天井のないトラックはギアダンプにしか見えなかった」
「それは見えないものが見えすぎ」
「最後にはもっとたくさんの車両が集まって雑然としてしまったけどね。あの3台がぴたっと綺麗に並んで停車しているのはやはり壮観だった」
「なるほど」
「作業が始まる前の状況はかっこいいの一言に尽きる、そして、作業が始まると手際のいいこと。あっという間にバラバラさ」
もう1つ分かったこと §
「オタク論の本を読んでいるとしばしば大阪万博に言及される」
「そうなの?」
「大阪万博の夢は、パビリオンが解体されていく光景で無残に消えたというわけだ」
「そうか」
「そこがオタク文化の原点であるような論調もある」
「へぇ」
「でもさ。今回ヤマトの解体に立ち会って思った」
「何を?」
「解体を見ることも、ゴージャスなエンターテイメントの一種だと。あるいは、終わりとはそれ自身が一種の快楽であると。これで終わりでもう先はないという気持ちのいい割り切りでもある」
「じゃあ、終わりはプラスに評価できるってこと?」
「ああ、そうさ。終わりとは終わりそのものを楽しむことができる一種の快楽だ」
「夢の終わりではない、ってことだね」
「夢に終わりはない」
「え?」
「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない(松本零士)」
「ははは」
「松本零士の未来に翔び立つ名言集の表紙に書いてあるよ」
オマケ §
「もう1つ分かったんだけど、まるでデスラーパレス。ってよく憶えてないけど、奇抜なビルとか多くて夜景も凄い。ここはそういう場所だったんだ」
「落ち着いて周囲を見ると見えてくるわけだね」
オマケ2 §
「ヤマトは分割可能で輪切りになって解体された」
「うん」
「ヤマトの輪切りを見ていて、連想したのは松本零士の模型の時代」
「ええっ?」
「実は大クロニクルにも出てくるのだ。松本零士がヤマトにスカウトされる原点的な作品らしい」
「どういうこと?」
「詳しい話はまたいずれな」
オマケIII §
「で、さすがはTBS前だ。夜が遅くなってもひっきりなしに人が通る」
「そうか」
「しかも物見高いのか、みんな見物して写真を撮っていく」
「ははは」
「で、何となく聞こえたところによると、このヤマトは百万円で売られるらしい。買い手が決まった後なのか前なのかは知らないが」
「このサイズで百万円なら高くはないね」
「置き場所の方がむしろ問題だろうな」
「確かに。君にも置き場所確保は無理だね」
「オレのポケットには大きすぎらあ」