「やっぱ警官は人命尊重を貫いとくもんだ。土壇場で大正解。野明の足の下だよ」
「は?」
「無駄だと思っても筋を通しておくといいことあるよ、と言いたいらしい」
「またそれ?」
「はたと気付いた。ひおあきら版のヤマトには爆撃装備がある」
「うん」
「爆撃とは、航空機の任務であり、軍艦の任務ではない」
「搭載機の任務という可能性はあっても、軍艦自身は行わないってことだね」
「もし、ひおあきら版が実際の映像にならなかった初期設定案に忠実だとすると、ヤマトは航空機というイメージでやはり良いのかもしれない。前にも書いたかも知れないが」
「なるほど」
「と思って思わす開いて読んでしまった……というのは、実は話の枕」
「ええっ!?」
「実はあらためて、ひおあきら版を開いて爆撃のところを読んで、その後でとんでもないことに気付いてしまったのだ」
SPACE BATTLESHIP ヤマトのワープ直前戦 §
「SPACE BATTLESHIP ヤマトのワープ直前の戦闘は以下の以下の特徴がある」
- 被弾した機体を励まして助ける
- 母艦を失った敵が突っ込んでくる
- ヤマトはロールで回避する
「うん」
「このうち、『被弾した機体を励まして助ける』だけがテレビと共通だ。対象が山本ではなく森雪になるが」
「そうだね」
「でも、後者2つはテレビにはない」
「そうだね」
「当初、全く別のネタかとも思った。ロールするのは機雷の回避なのか、とか」
「うん」
「でも、そうじゃなかった」
「というと?」
「ひおあきら版のラストは、スターシャがイスカンダルを自爆させ、ガミラスも巻き込む。その結果、デスラーは小艦隊で脱出に成功する。体当たりで突っ込んでくるが、ヤマトはデスラー艦をロールで回避する」
「ええっ!?」
「あらためて比較してみよう」
- ひおあきら版→母星を失ったデスラーが突っ込んでくる→ヤマトはロールで回避する
- SPACE BATTLESHIP ヤマト→母艦を失った敵が突っ込んでくる→ヤマトはロールで回避する
「ええっ?」
「だからどちらも以下のようになるんだ」
- 帰るところを失って自暴自棄になった捨て身の敵は怖い
「なんと」
「SPACE BATTLESHIP ヤマト、恐ろしい子。ネタのディープさ、想像を絶した。まさかもう読んだはずのひおあきら版にネタが見えるとは」
「日記に書いとかないとね」
「12月1日ヤマトに遭遇。侮り難し(アンダーライン)」
であるから §
「だから、ヤマトはこの戦闘で宇宙空母を撃沈しなければならない」
「そうか」
「宇宙空母を撃沈しないのがテレビの展開なのだが」
「うん、始めて消えるヤマトを見届ける役目だね」
「でも、ここでは話が変わってくる。ヤマトの最初のワープではないし、ひおあきら版のエッセンスをここで注入するなら、帰るべきところを失った怖い敵を用意する必要があるからだ」
「でも、なぜガミラス本星でやらなかったのだろう?」
「それはできない。なぜなら、ガミラスの設定が大幅に変わってしまったからだ」
余談 §
「1つ見えてきたことがある」
「何を?」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトを語るには、おそらくテレビと映画だけ見てもダメだ」
「そうか。こんなのヤマトじゃないというのは簡単だが、実は石津嵐版からひおあきら版に続く広大な『ヤマト地平』を見渡せば、『やはりヤマト』ってことになるのか」
「そうだ。そして、更に言おう。石津嵐版もひおあきら版も、『こんなのヤマトじゃない』と元々言われたものなのだ。実際にはより原型に近い原始形態のヤマトらしいのだけどね」
「なるほど。それじゃこれも単に昔から良くあるネタの繰り返しだね」
「そうさ。おいらだって、昔はそう思っていた。ひおあきら版は好き勝手にやったヤマトであってヤマトじゃないコミックだと思っていた」
「頭を丸めてお詫びしないといけないね」
余談2 §
「ちなみに、昔のオーディオテープのサルベージ作業は細々と続いている」
「うん」
「これを書いている昨日取り込んだテープに、ドメルの『侮り難し』の回が偶然入っていた」
「なんと」
「しかも、森雪のまずいコーヒーも、林も出てくる。ドメルとデスラーとスターシャも出てくる。髭の隊長もでてくる。ドメルの大艦隊が撃ちまくるほぼ唯一の話だ。いいエピソードだ。しかも、個人的には、最初に本編を全て録音したエピソードでもある」
「そうか」
「どうでもいい余談だが、同じテープに新八犬伝の歌も録音されていたので、久々に子供の頃に気になっていたことを調べた」
「というと?」
「『仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌』という歌らしいのが、地震・雷・火事の次が良く分からなかったが、漠然と『親父』のような気がしたが『親父』には聞こえなかった。今調べてみて分かった、ここは『怨霊』だよ」
「確かに、我こそは玉梓が怨霊という人形劇だからね」
「久々の胸のつかえが取れた気がすする」
余談III §
「しかし、髭の隊長ってネタどこまで通じるだろうか」
「コーヒー以上に難しいネタかもね」
「整備中に手で口を拭いたら黒いのが顔について髭みたいな古代で、それを見て加藤が髭の隊長様と言っただけなんだが」
「シナリオにも無いし、憶えてる奴は少ないだろう」
「でも、古代君命の女性軍は意外とよく憶えていそうな気もする。ここまでお茶目な古代君はあまり多くない」