「何か状況が変わった?」
「府中の巨艦店では、圧倒的にAndoroidという状況になってきた。ムックがおおむね7~8誌ぐらい並んでいた」
「iPhone/iPad本は?」
「数的にかなり見劣りする感じだ」
「じゃあ、年末商戦はAndroidの圧勝という感じで良いのかな?」
「そうとも言い切れない」
「というと?」
「いいかい。巨艦店はなんでもあるのが売りなんだ。だから、売れる売れないに関係なく、豊富な品揃えを行う」
「ええっ?」
「だからさ。巨艦店で種類が多いことは、出版社側が出している種類が多いことを意味するが、売れていることは必ずしも意味しない」
「じゃあ、普通の書店だとどうなの?」
「桜上水の啓文堂も覗いたが、Android本はさっぱりだった。ほぼ無いに等しかった」
「じゃあ、現状はどうなのさ」
「うん。だからiPhoneブームの夢よもう1度ということで、Android本を出す出版社は多いらしいが、一般消費者が買い求める行動にはまだ結びついていない感じだ」
「ならばAndroid圧勝とも言えないね」
「そうだ」
「じゃあ、現状はどう解釈すべきなんだろう」
「作り手側の状況としては、Android圧勝。そもそもiPhone互換デバイスは他社が作れないし、かといってWindowsPhoneには踏み切れない。候補はAndroidしか残らん」
「そうか」
「でも、一般消費者側はかなり冷めている。高価なデバイスをほいほい買えるゆとりも少ないし、そもそも高機能デバイスへのニーズも乏しい」
「通話とメールぐらいでほとんど用が足りるってことだね」
「それでも作り手があらゆる製品にAndroidを突っ込んで強引に売ってしまうとか、何か理由の良く分からないブームが起きてガンガン売れるような状況になれば定着するかもしれない。しかし、やはり割高要因として敬遠されるかもしれない。そこは良く分からない」
「なるほど」
「でも、他にも懸念事項がある」
「なに?」
「実は、Android本は多いが、それは知識がある者が見た場合に限られる」
「ええっ?」
「実際は、Androidの名を冠した本の他に、GALAXYやIS03や、あるいはその他の名前で出された本もある。それらを合わせると多いのだが、知識が無い者が見てもそれが全部Androidの本であることは分からない」
「そうか、そうなると本屋で流行っているムードを盛り上げて売るのも難しいね」
「ブランディングにまず失敗している感じはあるな」
オマケ §
「そもそも君はAndroid普及に反対みたいだね」
「厳密に言うとそうじゃない」
「どこが違うの?」
「おいらの主張は簡単だ。健全な自由競争とはプラットフォームビジネスではあってはならないものだ」
「ええっ? 競争しちゃいけないの?」
「まさにその通り。プラットフォームは安定した1つであるべきだ。そうでなければみんな困る」
「自由競争の否定とは、封建的な世界を支持するってこと?」
「そうじゃない。健全な自由競争は必要だが、それはプラットフォームでやったらダメだということだ」
「どういうこと?」
「たとえば、アプリを作ったとしよう。そのアプリは特定のプラットフォームでしか動かない」
「仮想マシンはどうなんだい?」
「完全な解決策にならない。どこかで非互換が出るリスクがある」
「それで?」
「プラットフォームAとBがあるとき、アプリCがA用、アプリDがB用であったとき、CとDは競争ができない。Aの持ち主はCを、Bの持ち主はDを選ぶしかない。つまり、選択の自由が奪われる」
「なんだそれは」
「現在、健全な自由競争と呼ばれているものの正体は、実際には選択の自由をユーザーから取り上げる囲い込みの方策だってことさ」
「でもなんか納得いかないなあ」
「だからさ。プラットフォームはユーザーにとって実はほとんど意味がない。ユーザーにとって意味があるのはアプリなんだ。しかも、アプリのバリエーションの多さは何桁も違う」
「ええっ?」
「たとえば、たった2つのプラットフォームの競争を認めると、それによって即座に数万のアプリから選択の自由が奪われるわけだ。どっちが得かよく考えてみたまえ」
「それも無茶な話だね」