ジブリの『魔女の宅急便』で引っかかるのは腕木信号機。序盤、キキが雨で貨物列車に待避した後に出てきます。背が低すぎて勾配標と取り違えられて描かれているような気がします。しかし、違和感がありました。けっこう真剣に描いているはずなのに、腕木信号機だけ特に変です。
さて。杉並アニメーションミュージアムの企画展『トキワ荘のヒーローたち ~マンガにかけた青春~』を見ていた時です。
ああっと思うコミックが展示されていました。
森安なおや『少女さくら』 §
トキワ層の漫画の1人である森安なおやの『少女さくら』です。
1ページだけの展示で以下の要素が充満しています。
- 貨物列車
- 貨車で旅する女の子
- 貨車から外を見る女の子
- 腕木信号機
- 夜
- 嵐
- カラス
ともかく魔女宅の要素がてんこ盛りです。
魔女宅ではカラスの登場はウルスラの小屋まで待つ必要がありますが、カラスの代わりにその後で海鳥と飛ぶことになります。
腕木信号機の描写 §
ここで注目すべきは、腕木信号機の描き方です。見ると明らかに「正しく」高い位置に描かれています。ただし、背景は夜空だけで素人が見ると高さが分かりにくい絵です。つまり、ここだけに誤認の罠があります。
宮崎駿監督はこれを読んでいたのか? §
宮崎駿監督が『少女さくら』を読んでいたかは分かりませんが、読んでいても不思議ではありません。宮崎駿監督はもともと漫画家挫折組であり、トキワ荘の漫画家に対する注目はあったはずだからです。
ちなみに、宮崎駿監督は鉄道マニアではありません。かなり知識は不正確です。素人と思って良いでしょう。鉄道に詳しいのは、大塚康生さんの方です。
感想 §
森安なおや『少女さくら』、読めるものなら読んでみたいと思いますが、貸本時代という壁があるようです。貸本時代の本は入手のハードルが跳ね上がってしまいます。古いだけで無く部数も少ないからです (読者の数では無く貸本屋の数しか刷られない)。更に値段もおそらくとんでもない高価なものになるでしょう。ちなみに、『少女さくら』は「短編誌「星」連載―全4回 きんらん社 昭和35年」だそうです。