「これも(本文は)かなり前に書かれたものだな」
「順調に遅延したってことだね」
本題 §
「実ははっと気付いた」
「なに?」
「ヤマトのスタッフというのは、実はヤマト固有とも言い切れない」
「というと?」
「ワンサくんが既にヤマトと同じようなスタッフでやっているわけだ。全ての西崎作品が同じスタッフというわけではないが、準固定メンバーでやってるケースもある」
「そうか」
「そこで、いわばチーム西崎は成立している」
「それで?」
「チームはしばしば助っ人外人を入れて不得意分野の戦力を補強する」
「そんなもの?」
「たとえばロッキーチャックなら本来の流れとは異質な森やすじという外人を迎えて戦力強化した作品と言える」
「なるほど」
「ならば、ヤマトはどうか」
「そうか。ロッキーチャックの時はまだチーム西崎は完成していないが、ワンサくんで既にチーム西崎はほぼ完成しているから、そのチームを補強する外人というわけだね」
「当初は戦艦大和を描けるコミカライズ要員としての招聘だったみたいだがな」
「でも、チーム西崎を食ってしまうほどの大活躍をしたよ、松本先生は」
「そうだ。そこで話が捻れた。戦力を補強するために、1年で本国に帰るパートタイムの外人として松本先生は迎えられたはずだが、いつの間にか主導的な役割を持ってしまった」
「それが若さというものかな」
「少なくともチーム西崎にとってアニメは継続的に手がけている定番の商品だったが、松本零士には始めて本格的に手がけるアニメということで、興奮もあったのだろう」
「なるほど。だから主導権を取ってしまうほどの熱意があったわけだね」
「でもさ。外人は勝つためには重要な要素であるが、仲間というにはやや距離があるわけだ」
「なるほど。そこが認識の相違ということだね」
「うん。だから、チーム西崎としては別の外人を呼んでくるという選択肢が常にあるのだが、松本零士サイドからはあり得ない。松本零士こそがヤマトの中心であるはずだからだ」
「別の外人? そんなのあり得るの?」
「あり得る。シド・ミードが実際に別の外人として2520をデザインした」
「そうなるわけか!」
「それに、チーム西崎も一体というわけではなく、いろいろある。松本派になる人もいたりね。かなり状況はぐだぐだになる」
「そうか。外人の助っ人として入ったはずの松本零士がキャプテンにまでなってしまうと、逆に外人扱いするかキャプテン扱いするか、チーム内でも揺れるということだね」
オマケ §
「この問題は、スターとなるエース級人材がヤマトには多いことにも一因がある」
「一国一城の主となる人も多いね。ダイアポロンカリスマとか」
「そんな話をするまでも無く、ワンサくんで既に監督をしている山本暎一だの、既に実写の映画を何本も撮っている舛田利雄だの、SF作家として既に地位を確立している豊田有恒だの、凄い人材がゴロゴロしている」
「松本先生の特権性があるのか無いのか見えにくいってことだね」
「それが見えた人と、見えなかった人がいるのかもしれない」
「話が、ぐちゃぐちゃになるわけだね」
オマケ2 §
「結局、この問題は、人によって真実は違って見えるという典型的な問題の1バリエーションでしかないのかもしれない」
「そんなに違うの?」
「そうさ。同じものを見たって違うものが見える。良くある話だ」
「そうかな」
「さらば宇宙戦艦ヤマトを思い出せ。あの結末の評価は分かれたぞ」
「泣いたって意見と白けたって意見だね」
「でも、泣きバージョンのフィルムと白けバージョンのフィルムがあったわけではない」
「受け手の感性の問題ってことだね」
オマケ2520 §
「あり得る。シド・ミードが実際に別の外人として2520をデザインした」
「そうか! 確かにシド・ミードは外人だ!」
「なんか違う」
オマケじゃない §
「僕は凄いものを見たんだ。大人はみんな笑いながらテレビの見過ぎと言うけど、僕は絶対に絶対に嘘なんて言ってない」
「そうか。凄いものを見たと彼が思ったことは嘘じゃ無いわけだ。でも、別の誰かも凄いものを見たとは限らない訳か」
「そうさ。だから話はそこからスタートする必要がある」
「それはある意味で常識に反するね」
「常識というルールで僕たちの世界ははかれないからな」
「ははは」
「でも、それは本来なら常識でなければならないんだ」
「証言は当てにならない。物証が重要ってことだね」
「逆に言えば、誰が何を見たのかを把握せずに行動は何も判断できない」
「今時のヤマト研究はそこまで踏み込まないと先に行けないってことだね」
「そうだ、特に場外乱闘にまで入り込んでしまうとな」