「午前10時の映画祭だね」
「そうだ。しかし、何の思い入れも見る理由も無く、まして何も知らない映画であった」
「なのに、どうして見たの?」
「何も理由が無いからだ」
「えっ?」
「それが新鮮な出会いというものだろう?」
状況 §
「客席はどうだった?」
「半分には遠く及ばないがけっこう入っていた。劇場もスクリーン2という比較的大きなスクリーンを使っていた」
「人気があるってことだね」
「そうらしい」
中身 §
「それで中身はどうだった?」
「うーん、微妙」
「午前10時の映画祭に外れ無しだったのじゃないの?」
「そうだけどね。でも、時代的に合わないのかも知れない」
「合わない?」
「何不自由が無く生きている大金持ちの主人公は感情移入できない」
「うーむ」
「だから、日本ではおそらくバブル期に相当する時代じゃないのかな」
「なるほど。何不自由が無く生きている大金持ちがいくらでもいそうだね」
「でも相変わらず、ディティールのレベルでは今の日本と違和感が無い」
「そうか」
「たとえば、自動的に開いて車を降りずに入れる家の柵とかね。今なら日本でもリモコンで開くガレージとか珍しくもない」
「なるほど」
「あと、無駄に立派な大理石のビルとかバブル期に日本でも建ってる」
「そうだね。あとバブル期の設計でバブル後に完成とかね」
本当のサプライズは §
「でも、映画って本当にびっくりするものなのだね」
「結末が?」
「いや、結末は平凡」
「何がびっくりしたの?」
「主演はスティ―ヴ・マックィーンだが、相手役はフェイ・ダナウェイなんだ」
「それがどうしたの?」
「相手役の名前までチェックしてなかったけど帰ってから調べて気付いた」
「それが何なのよ」
「フェイ・ダナウェイって女優は実は知らなかった」
「そうか」
「でもフェイ・ダナウェイって言葉は知ってた」
「どこで?」
「シティーハンターの主題歌の歌詞で」
「何の歌だよ」
「21歳で仕送りもらってる情けない男の情けない歌だ」
「ひぇ~」
「何か変な擬音かと思っていたが、女優の名前だったのだなあ」
「なんて奴だ」
「それが最大のサプライズだった。今日見た映画はまさにフェイ・ダナウェイがでまくりの映画であったのだ」