「首が回らん。いろいろな意味で」
「それなのに、どうして映画に行ったの?」
「首が回らないからこそ、映画の1本も見る心のゆとりが必要だ」
「それでどうだった?」
「今回は2本立てだ。ライダーと戦隊の映画がセットになった3D上映だ」
「その構成に関しては何かあるかい?」
「あるとも。今回の映画は、松平健の暴れん坊将軍が共演するライダーが目玉だと思っていた」
「戦隊は添え物ってこと?」
「しかし、実は違った。真の大物ゲストは別にいた。しかも戦隊側に」
「誰だよそれは」
「野球仮面だ」
「は?」
「言うまでもないが、子供の頃はゴレンジャーが好きだった。しかし、その中で一番好きな印象深いキャラは誰か分かるかい?」
「カレーの黄」
「ぶぶー」
「いいわね、いくわよのの桃」
「ぶぶー」
「バリブルーンを操縦する青」
「ぶぶー」
「じゃあ、主役の赤?」
「ぶぶー」
「ミド?」
「ぶぶー」
「分かった。あんみつの黄」
「ぶぶー」
「誰だよ」
「だから野球仮面なんだよ。戦隊が目指すべき別格の理想像は野球仮面にあった」
「登場は1回きりだろ?」」
「その1回が凄かったのさ」
「それじゃまさか」
「おいらにとって、野球仮面こそが最強のゲストであり、松平健が霞むほどだった」
海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE 空飛ぶ幽霊船 §
「じゃあ、個別の映画について頼むよ」
「シルバーの出番を最初と最後に絞ったのは正解だな。ザンギャックも出番を最初だけにしたのも正解。映画には過剰な登場人物を収容できる余地は無い」
「それから?」
「最後にマベちゃんが嘘をつくのもいいね。仲間を助けるために秘宝の力を使っていながら、『偽物だった』と説明するところはいい。あれがマベちゃんのダンディズムだ」
「なるほど」
「もう1つ、ロボ戦の描写がまるで違うんだ」
「えっ?」
「ゴセイジャーあたりから変わり始めたメカ戦描写なんだが、ここに来て別の世界に行った感じだな」
「どう違うの?」
「ロボが小さいのだ。かつてロボは巨大に描くのが当たり前だったが、ロボが小さくよく動くようになった。その結果、ロボ戦は感覚として等身大戦の延長線になった」
「それは弱点かい?」
「いや、進歩だろう」
「どうして?」
「巨人になるからパワーがあるという描写にならないから、やはり勝つには努力や工夫が必要になる」
「さて、最後に質問すると。野球仮面は?」
「黒十字軍のホームラン王」
「じゃなくて。この映画ではどうだった?」
「限られた時間の中で描くとしてはパーフェクトだろう」
「野球仮面だからじゃなくて?」
「野球仮面は素晴らしいが、倒し方がとても正しい」
「倒し方?」
「うろ覚えで書くとだな。桃が爆弾を投げて、黄がキャッチャーに入って、ミド、アオ、アカの順に投球する。野球仮面は三振して爆発」
「えっ?」
「細部には違いも多いのだが、基本的なパターンが遵守されている。しかもそれをゴーカイチェンジでゴレンジャーになったゴーカイジャーがやるのだ」
「まさに完璧ってことだか」
「だから、真の見せ場はここ。おいら的にはここ」
「そうか」
「あと最後に必殺技で出るメカの1つがバリブルーンだったのはいいね」
劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル §
「この映画はどうにも評価が難しいな」
「どうして?」
「やはり登場人物が多すぎて印象が散漫になってしまうのだろう」
「基本的に主人公とアンクの2人じゃないの?」
「それにヒロインを足して3人。それなら収まりはいい。だが実際はかなり拡散してしまう」
「というと?」
「鴻上会長がいいキャラで、里中君もいいキャラだ。しかし特に問題はバース」
「どうして?」
「バースは伊達さんなのか後藤君なのか明確では無い上に、実は映画の中で火野映司までバースになる。つまりとても分かりにくい」
「そうか」
「更に真木博士に、グリード4人衆まで出てきてもうわやくちゃ」
「松平健も出るしね」
「というか、おそらく割を食っているのが松平健。せっかくの大物起用なのに、印象が薄まってしまった。真木博士の人形とか、里中君のアクションと印象的には大差なくなってしまった」
「そうか」
「まだある。ラストはオーズが分裂するコンボを経由して複数のフォームがズラリと並んで攻撃するのだが、1人のはずが増える根拠が分かりにくい」
「つまりどういうこと?」
「1つ1つの描写は良くできているのだが、全体をつないだ時点で詰め込みすぎの感じがある」
「なるほど」
「それからもう1つ。実はこの映画はTVシリーズとリンクしていない」
「えっ?」
「TVシリーズだと伊達さんは引退済みなんだよ。アンクは敵なんだよ。そういう意味でも、見て分かりにくさがある」
顔見せ §
「仮面ライダーフォーゼが顔見せ登場した」
「よくあるパターンだね」
「問題は、そこでオーズが『ライダーは助け合い』と言っていたが、これは確かオーズ自身が顔見せで映画に出たときに言った台詞なんだ」
「継承されているってことだね」
「この小さい気遣いは嬉しかった」
「それでフォーゼの感想は?」
「ちゃんと聞き取れたかは分からないが、全てのライダーに会う男だそうだ。詳細はヨクワカラン」
「分からないのか!」
「しょせん、顔見せだしな」
3Dの問題 §
「3Dの使い方は上手くなったと思うよ」
「どんな風に?」
「ことさら、3D上映を意識した映像を出すようなことはしないで、もっと自然にできるようになったと思う」
全般的な感想 §
「予想外であったが、今回はライダーを見に行ったつもりであったのに、戦隊の方が良かった」
「ライダー映画は黙って見たいわけだね」
「そうだ。でも、戦隊映画の方が良かった」
「そうか」
「暴れん坊将軍を見に行ったつもりが野球仮面を見てしまった」
「結局それかい」