「というわけで、卒業を見てきた」
「古い映画だろ」
「午前10時の映画祭だ」
「どうして?」
「ネタとして使われた事例は見た回数が多いのに、オリジナルの映画を見たことが無いので気持ちが悪かったので、いつか見たかった」
「なるほど」
発端 §
「というわけで、9月になっていつもの映画館が戻って来たはずだ」
「それで?」
「今はどんな映画をやってるのかな、まだ夏休み映画を細々と上映しているだけかな。と思って府中の上映リストを見て驚いた。卒業って書いてある」
「わはははは」
「というわけで、即刻卒業を見に行くことを決定」
感想 §
「それで感想はどうだい?」
「すげえ、鼻持ちならないエリート男が主人公。しかも、自分の未来が決められないとほざく贅沢野郎」
「じゃあ、映画は感情移入できない?」
「そうでもない。年増女にコロッといいように操縦されて転落人生一直線」
「年上の女性に性の手ほどきを受けるパターンが欧米では人気だっていうね」
「母親並の年増だ。旦那がいて不倫になる」
「ぎゃふん」
「しかも、途中から娘に乗り換えちゃう。世間知らずのお子様だから」
「ひでえ奴だ」
「まだまだ。そんなものじゃない」
「えっ?」
「主人公、大学院にも行かず就職もせず、プー太郎のままストーカーになる。娘の大学の近くに住んでしまう」
「なんてひどい奴だ」
「しかも、最後に既に終わった不倫がばれる。娘は他の男と結婚させられる」
「その結婚式に娘を奪って逃げるわけだね。有名なシーンだ」
「そうだ。痛快だ。車のガソリンが切れて自分の足で走って式場に到着。その後は、高いガラス窓から娘の名前を叫んで、その後は十字架を振り回して乱闘だ。娘も協力して一緒に戦って一緒に逃げる」
「いい結末か」
「そうじゃない。実は2人で逃げ出してバスに乗るのだが、不安そうに娘が主人公を見ても、主人公は前を見たままで娘の不安を和らげようともしない。既にここで心がすれ違っているんだ」
「つまりどういうこと?」
「主人公はとことんダメな勘違い野郎で、しかも狂っているジコチューということだ」
「ええっ!?」
「だからさ。彼は娘を連れて逃げられればそれで良かったんだ。娘は彼の所有物であり、持ち逃げが成功した事件でハッピーエンドなんだ。でも娘からすれば、これからが大変なんだよ。こんな奴だとは思ってなかったが、もう戻れない。何しろ両親の前で戦って逃げ出しちゃったのだからね」
「つまりどういうこと?」
構造的に言えば §
「だからさ。この映画はエリートの転落を描いているわけだ。それと、もう1つの裏テーマが女が親子2代でダメ男に引っかかって人生を狂わせてしまうという話なのだ」
「えー」
「でも、女側は不幸のタネを自分で蒔いているんだよ」
「ひでえなあ」
「そうだ。ひでえ話さ」
「じゃあ、ダメ映画ってこと?」
「そうじゃない。ひでえ話の方がワクワクするだろ?」
「ぎゃふん」
もっと構造的に言えば §
「実はこの映画は構造的にいびつなんだ」
「どうして?」
「BOY MEETS GRILSでスタートしない。最後に駆け落ちする娘はなんと中盤まで出てこない。最初は年増女がヒロインなのだ」
「まさか。それじゃ映画にならないじゃん」
「そうじゃない。実は、主人公から見た女は、母と娘で本質的に差が無いんだ。親子だからどこか似ている。しかし、単に若い方がいいし、独身の方が気楽に付き合えるという意味で、娘の方を選んでいるに過ぎない」
「娘が人間扱いされてねえ!」
「そうだ。だからこそ、結末のバスに乗ったときの主人公の表情に意味がある。彼は連れ出してバスに乗った時点で話が全て終わっているんだ。今更に娘を見て不安を取り除く必要もない。だって、娘を独立した人間扱いしてないからだ」
「娘が不幸」
「そうとも言えない。娘も、デートしていてもハンバーガーとかポテトをむしゃむしゃ食べ続けて緊張感があまりない。隙は大きいよ」
その他 §
- ラストで主人公と娘が乗った黄色いバスが小さな川を渡る (さりげなく橋の上を通る)
- 終わった後の客が暗い。そりゃそうだ。こんな映画だし。でも、意外と大きなスクリーンでやっているので、客の入りはいいようだ
- 穴を2つ開けて飲む缶入り飲料。今はプルタブで1つ開けるのが多いが、昔は穴を2つ開けていた。1つは空気抜き