2011年09月21日
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Windows Phone 7.5は悲観的セキュリティモデルか?

Written By: 川俣 晶連絡先

「実はけっこう前から悲観的セキュリティモデルという概念を考えていた」

「それはなんだうい?」

「客を見たら泥棒と思え、という思想だ」

「それは行きすぎじゃ無いか?」

「そうでもない。どこの誰かも分からない人が名乗りもしないでクレームを付けてきたとき、はたして彼は客だろうか、クレーマーだろうか」

「それは分からないね」

「実際にネット上ではかなりの割合で人間は匿名で扱われる。オンラインショップで販売を代行しているとき、ショップでは誰が買ったか把握しているのに、販売を委託した側には教えないとかね。そういう実例もある。その場合、販売元ではなく開発元にクレームを付けてきた相手が客がクレーマーか識別することは100%できない」

「ひでえな」

「だから、現在のネット上では、客を見たらまず泥棒と思うのは順当な態度であろうと思う。けして行きすぎではない」

「それがなぜ今話題になるの?」

「Windows Phoneのセキュリティモデルさ」

「なんだいそれは」

「基本的にWindows Phoneはアプリの連携ができない。また、システムを拡張する便利ツールもほとんど作ることができない」

「不便じゃん」

「しかし、これは悲観的セキュリティモデルそのものだ。アプリは全て信用できない。他のアプリの重要情報を盗もうとしているのではないか。そういう疑惑があれば、他のアプリとの関連性など絶対に持たせることはできない。ましてシステムの拡張など自由にはさせない」

「でも、多少はできるんだろ?」

「そうだ。シェルの拡張でアプリを実行するとか、他のアプリからテキストをクリップボード経由で持ってくることなどはできる。でも、それは全部手動操作が前提なんだ」

「自動的には走らないわけだね」

「裏で知らないうちにこっそりと……ということは極力抑止されている感じだ」

これでいいのか? §

「これでいいの?」

「なめるなよ。何もかも自由になるコンピュータがあたり前だと思うなよ」

「えっ? マシン語モニタでめんどくさい16進コード打ち込めば低レベルで自由に何でもシステムを操作できるのが当たり前じゃないの?」

「違うね」

「まさか」

「NECのTK-80は低レベルの操作がいくらでもできた。チップのトレーニング用だから当たり前だ。でも全ての製品がそうじゃない。初期のマイコン製品だとKX33とかMZ-40Kとか、まさに内部の詳細に手出しができないマシンがあったし、やや時代が下ってすらカシオのFP-1100というサブCPUで自作プログラムを実行できないマシンがあった。サブCPUにビデオメモリがあったから高速な画面処理が不可能だ。あとから強引に実行する手段が発見されたらしいが。そういう意味では富士通のFM-8も初期にはサブCPUが公開されておらず、高速画面処理が書けなかった。さすがに隠しAPIでプログラムを転送して実行できたけどね」

「ひぇ~」

「それだけじゃない」

「えっ?」

「PC-1251というポケコンを昔持っていたが、これは内部が完全に非公開の製品だった。でも楽しかったぞ。後で、マシン語の活用が開拓されたことを知って驚いたが、それまで待たずとも面白かったぞ」

「どういうこと?」

「だからさ。低レベルまで自由になることが当たり前だと思うなってこと。それに制限の有無は面白さとは直接関係ないってこと」

「制約の中でアッと驚く面白くことができれば、それで十分に楽しいってことだね」

「そうだ。だから、悲観的セキュリティモデルだからといって、悲観するのは間違っている」

「じゃあ、どういう時に悲観するの?」

「面白くないデバイスの時だな。IS12Tは面白いから、それでいいや」

「何もかも思い通りのプログラムが書けなくても?」

「そうだ。人生、何もかも思い通りになるわけがない」

「それは制約ではなく前提だってことだね」

「そうだ。何でも思い通りになると思ったらそれは心が子供ってことだ」

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