「今の原発問題、実は『原発問題』としては見ていない」
「えっ? なぜ? 原発問題なんだろ?」
「途中の話はかなり飛ばすが、実は『穢れの思想』と、伝統的にある『東日本差別』の問題と連動して話が大幅にこじれている可能性があるのではないかと思い始めている」
「穢れの思想?」
「それも一種の差別思想だな。劣っているわけでも汚れているわけでもないけど、『あいつは穢れているから避けて通ろう』と徒党を組んで差別する。そういうことが行われる場合がある」
「東日本差別とは?」
「日本という国が成立したとき、東日本はまだ日本の一部ではなかったわけだ。今では東京が日本の首都で中心は東に寄りにあるように見えるがね」
「確かにそうだよね」
「江戸時代に領地をいろいろ入れ替えて人も移動して西日本だからとか東日本だからとは言えないと思うが、差別思想は実態を踏まえず思い込みで差別するからそんなの関係ないだろう」
「関係ないのか」
「差別というのは、そういうものだ」
「うーむ」
「だからさ。本当は『子供がいて怖いから福島県産は買いません』とか平然と言う若い母親は実際には『福島の子供はいくら放射能でおかしくなってもいいです』と言い放つことに等しくて、どうかしている。しかも、それを平然と流すテレビもな」
「それは確かに相手の気持ちを考えれば酷い言い分だよな」
「それに類することを地方自治体がやってたりすると、全く日本は差別大国のままだと実感するよ」
「放射能が検出されたらやはり買わないのも選択では?」
「ははは。ここで問題にしているのは、単に『怖いから』という理由で福島県や東日本から来るものを拒否する態度さ。計測して基準値を超えたという話ではない」
オチ §
「話はそれだけかい?」
「実はさ。『穢れと茶碗』という本が本棚にあったな、と思ってさぐってみたらあった。平成6年の本だ。読み直してないから良い本か悪い本かは分からない」
「それじゃ意味ねえ」
「ところがね。帯には『自衛隊差別と部落差別は同根』と書いてある」
「自衛隊差別か」
「そこで平成6年から今に戻る。以下は2011.09.28の最新ほやほやの文章だ。反原発集会について書かれている」
主催者発表と警察発表の違いより
集会に参加した知人が言っていた。
「シュプレヒコールの中で"警察帰れ"はないだろう」
「自衛隊も警察も国家の暴力機関で同じようなカテゴリに入ると思うなら、結局言ってることは似ているわけだ」
「えっ?」
「だからさ。日本は天皇と貴族が支配していた。その暴力装置としてサムライという人たちが存在したが、格下であったわけだ。実質的な日本の支配権をサムライは獲得していくが、実は制度上は常に天皇の格下にあったのだ」
「格下? 将軍様なのに?」
「だからさ。下高井戸のお祭りで桜上水交差点に下町仲町上町の3つの御輿が集まるが、上町は京都寄りだ。東京の都心に近い方ではない。地名の上は京都側なんだ」
「そうか。だから、サムライ差別がそのまま自衛隊や警察の差別につながるわけだね」
「そうだ。その思想がそのまま穢れという発想と結びつくのかもしれない。そして、目には見えない不浄のものという思想はそのまま放射能と結びつく」
「じゃあ、東国差別っていうのは?」
「多くの場合、サムライの本拠は東国にあるからさ。鎌倉幕府も江戸幕府も東国だ」
余談 §
「この話題は『本当に日本は統一国家なのか』という問題にも結びつく」
「どういう意味だい?」
「巨大な中央政府が圧倒的な力で均一な文化を押しつけているからまだしも1つの国家が成立しているのであって、地方分権を進めて地方色豊かな活動を容認したら、国家が分裂しかねない」
「まさか」
「フィクションの世界では、とっくの昔に日本は分裂している。吉里吉里人なんて、まさにそう。しかも、東北の村という意味で、福島ともイメージが重なるね。いや本当に重なるかは分からない。読んだのはかなり昔で細部は覚えていない」
余談2 §
「書いたあとでひらめいた。地方分権の背景にはいろいろな要素がある。しかし、そのうちの1つを見落としていたのかもしれない」
「なんだい?」
「つまり、東国による支配の打破だよ」
「えっ?」
「穢れた東京もんなどに支配されるのはまっぴら御免。我々は我々の真の文化を取り戻したい、と西日本に住んでいる人たちが思っている可能性に思い至った」
「そんな発想があり得るの?」
「僕らはそう思わない。産まれたときから首都は東京で、江戸時代まで遡っても日本の中心は江戸つまり東京にある。京都なんて、時代遅れの天皇とお公家さんが住んでいただけとしか思えない」
「でも、彼らは違うんだね?」
「そうだ。もともと、彼らが日本の中心であったわけだ」
「天皇陛下は東京に一時的に貸し出しているだけ、という発想だね」
「実際にはもう人の行き来は激しくて、西だから東だからどうこう言える時代じゃないけどね」
「思い込みの問題?」
「だろうね。でも馬鹿にしてはいけない」
「思い込みってことは現実じゃないんだろ?」
「現実じゃなくても、思い込んだら試練の道をだ」
「そうか。重いコンダラを引いて不可能を可能にしちゃうんだね?」
「そうだ。大リーグボール3号を投げすぎて肩を壊しちゃう。道理を引っ込めて無理を通すと残るのは破壊だけだ」
「真面目に語ってるのか不真面目に語ってるのか分からないよ」
「同じブログ記事でも結局同じ事を言っていたよ」
まかり間違えば、とんでもない二次災害が起こる。
「これもまた、道理を引っ込めて無理を通すと残るのは破壊だけってことだね」
追記 §
「以上を公開させてホッとした後、何気なくTwitterを見てたのよ」
「それで?」
「嘘か本当かは知らんが、こんなものが紹介されていた」
親父の告白・・・。（口調が厳しいのでスルーでも可）より
「その席に福島県人が乗ってるぞ！降ろした方がいいんじゃねーか？放射能うつるぞ？運転手さんよー！」
「確かにこれはもう原発の問題でも放射能の問題でも無い。古典的な差別の問題だね」
「涙が出るぐらい昔からある古典的な問題だ」
「それで。嘘なの? 本当なの?」
「さあな。それは知らん。ただし、このような発言があってもおかしくない状況だという認識は一般的にありそうだ。嘘はそれが無いと成立しない。本当ならまさにそのもの」
