「大変だ。今日は1日じゃないか」
「吉田君のように声を上げてどうした」
「今日は映画が1000円で見られるじゃないか」
「それで何を見たんだい?」
「実は、コクリコ坂をもう1回見るということで、ほとんど気持ちは固まっていた。10月に入ったのに、府中では1日1回とはいえまだ上映しているのだ」
「なるほど」
「でもさ。異なる複数の方向からモテキが面白いという話が聞こえてきた。こういう話が聞こえてくるのは珍しい。しかも複数は極めてレアだ」
「へえ」
「というわけで、急遽予定を変更してモテキを見ることにした」
映画として §
「それで面白かったのかい?」
「うん。面白かった。映画としてよくできている」
「それは大きな褒め言葉だね」
「ちなみに、モテキの原作は読んでない。TVドラマも見てない。そういう自分がぶらっといって、面白く見ることができること。それが良い映画の条件だ」
「予習は要求できないってことだね」
「最初はもう、ひたすらやりたいという主人公の欲望や、主人公を童貞と見なして行われる職場でのいじめや、パスワードを解析してTwitterの個人メッセージを見てしまう犯罪まがいの展開など、そりゃもう痛々しいほど酷い映画だ。そのままなら、とても見るに堪えない」
「では、そのままじゃなかったの?」
「その環境の中で主人公が男になっていくわけだ。最終的に周囲が捨て置けない存在になり、惚れた女を手に入れる。そこで筋が通るわけだ」
「それだけ?」
「そうじゃない。たとえば、本命じゃ無い女と別れるとき、2人の間をおっさんバイクが通過する。これが2人の縁を決定的に断ち切っているわけだね。いい演出だ」
ロケ地 §
「ロケ地は良い場所をいっぱい使ってるなあ」
「そんなに?」
「微妙に分からないのがはがゆい。電車は、夜のシーンが多く何線か良く分からない。1カ所、ロマンスカーっぽいのが通ったから少なくとも1つは小田急かも知れない」
「へえ」
「あと、世田谷線三軒茶屋駅前らしい場所が1回出てきた」
「どこ?」
「踊る少し前。でも、踊っている場所は三軒茶屋駅前付近では無いかもしれない」
「そうか」
「東京西部中心のような気がするけどそこは良く分からない」
映像 §
「カラオケとか、ダンスとか、映像も面白いな。エンディングはパソコン画面だし」
「へえ」
「エンディングをパソコン画面風にするのは、実はデジモンの僕らのウォーゲームでもやってるが、時代が違うので映像も違う。そういう内容」
「そうか」
「でも、最後に画面が崩壊していくのは意味深だ」
音楽 §
「音楽が非常に多く使われる映画である」
「そうか」
「でも、ほとんど知らない歌である」
「ぎゃふん」
「序盤に出てきたTM NetworkのSelf ControlとかGet Wildはかろうじて分かるけどな。というか、TMはタイムマシンとか古くて懐かしい話題が出てきたぞ」
「古いな」
「昔、CDを何枚か買ったことがある」
「昔かよ」
「で、知らない歌ばかりで別に分からなくていいと思って最後まで来てのけぞった」
「なぜ?」
「エンディングにスチャダラパーが出ていた」
「えっ?」
「歌は知らないが、どっかで見た顔が出ていたよ。びっくりした」
「スチャダラパーなんて知ってるの?」
「昔、CDを何枚か買ったことがある」
「またそれかよ」
まとめ §
「まとめにならないまとめを入れよう」
「何を言う気だ?」
「主人公の女上司。最初はボコボコにいじめてかなり酷い奴なんだけどさ。最後は主人公の行動を否定しないで背中を押してくれる。ここがいちばんいいところだろうな」
「どういうこと?」
「初期の主人公はただの甘ちゃん。辞める自由すら与えられない。ただのガキ」
「それで?」
「だから生意気なことを言ったり間違った行動を取ろうとするとすぐ殴られる。当たりまえ」
「そうか」
「でもさ。最終的に、何かを掴んで一人前の男になるわけだ。嫌いな恋敵の男を褒める記事すら仕事として書ける。大人になったわけだ」
「だから背中を押して貰えるわけだね」
「客がはいるのが良く分かる。いい恋愛映画であったよ」
「そんなに客が多かった?」
「土曜日の割引日という事情はあるとしても、けっこう多かったぞ」