「午前10時の映画祭で、有名なヒッチコックの鳥である」
「なんで正月にそんな旧作なんだよ」
「名前は前から知っていたが、見たことが無かったので、1回見たかったんだ」
「でも、なぜ正月にわざわざ」
「TOHOシネマズ府中の予定表を見たら載っていたからだ」
「それだけか」
「それだけだ」
感想 §
「それで感想は?」
「もっと普通の映画だと思っていた」
「は?」
「男がいて女がいて、鳥が絡んでくるが何か事件があるだけだと思っていた」
「違うのかよ」
「途中まではそれっぽい。一応、怪しげな女がいて、店員でも無いのに店員のふりをして、弁護士の男も出てくる。一応、男と女の話っぽく始まる」
「そうか」
「でも、途中からサスペンス恋愛ドラマから、正義怪獣が出てこない怪獣映画に変わる」
「正義怪獣が出てこない怪獣映画ってなんだよ」
「ゴジラだってガメラだって、最初はゴジラもガメラも人類の敵として出てくるんだ」
「それで?」
「鳥の襲撃が信じられない人間との葛藤から、どんどん人が死んでいき、最後はもう恋愛色も無くひたすら残った人間が立てこもって最後は車で脱出するという話だ。なんと人間が勝たない。尻尾を巻いて逃げるだけ」
「えー」
「一応、鳥が人間を襲う理由が明らかになって、何とか事件は収束して終わるのだろうと思ったら映画が終わってしまった。なんて映画だ」
「つまり、理由も明らかにならず、しかも人類は勝たないんだね?」
「そうだ。普通の怪獣映画ならあり得ない」
「瀕死になった郷秀樹は変身しないんだね?」
「尻尾を巻いて逃げていくだけだ」
「人類本当にダメじゃん」
「でも、そこがいい。そこは見ていて逆にスカッとする映画だね」
いちばんいいのは §
「どこがいちばん良かった?」
「ガソリンスタンドの店員が鳥に襲撃されてガソリンが地面に流れるんだよ」
「それで?」
「気づかないでタバコに火を付けようとする男がいる。みんなで危ないと必死に叫ぶのにそいつは気づかないでガソリンに引火させてしまう。大爆発だ」
「分かっていて惨劇が食い止められないなんて、人間にいいところがない映画じゃ無いか」
「そうだ。そもそも誰もが抱えている人間の苦悩など、鳥の襲撃の前には取るに足らない些細な問題に縮退してしまう」
まとめ §
「それでまとめると?」
「見終わった瞬間は肩すかし。えっ? これで終わっちゃうの?」
「でも気に入ったの?」
「うん。後から来る余韻は極上だ」