2012年02月20日
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37巻・なぜネギは疑問を持たずにセーラー服女装したのか

Written By: 川俣 晶連絡先

「37巻の最大の見所は、ネギのセーラー服女装である」

「おいおい。それは違うだろう」

「しかし、よく考えると『男の娘』ブームに便乗したただの受け狙いとも思えない」

「お約束じゃないってこと?」

「時系列で分解しよう」

  1. ネギは委員長に頼み事がある
  2. カモに相談する
  3. カモはセーラー服女装を提案 (カモのオヤジ趣味で)
  4. ネギはそれに違和感を感じないで、着替えた
  5. 言い出しにくいお願いがあるのでもじもじした
  6. 委員長が倒れた
  7. ネギは服装をすぐ戻した

「このシーケンスに問題があるの?」

「ある。実は真面目なお願い事があるのに、そのためにいくら相手の好みとはいえ、受け狙いの格好をするのはストーリー展開上、不自然すぎる」

「じゃあ解釈が違うの?」

「そうかもしれない。ここに1つのヒントがある」

「ヒントって何?」

「ただ単に女学生の女装コスプレをさせたいのであれば、麻帆良の制服の方が入手しやすいだろう。にも関わらず、麻帆良の制服ではないセーラー服を着たのはなぜだろうか」

「うーん……、カモの趣味? カモならセーラー服もコレクションしていそうだよね」

「いや。実は世界的に見てセーラー服とは海兵が着る服だ。そもそもセーラーとは海兵なのだからね。もちろん、その場合、着用するのは男だ」

「えー。男がセーラー服?」

「もちろん、下はスカートではないよ」

「そんなあ」

「一部の国ではセーラームーンをホモと認識されているが、セーラー服は男が着るものという認識があればそういうこともあるのかもしれない」

「日本とは意識が違うってことだね」

「ホモになるからセーラームーンなんか見るのやめなさいって、ケースもあるわけだ」

「じゃあ、普通の女学生の制服からセーラー服にした瞬間に、日本文化にうといネギが受容するハードルが下がるわけだね? 男が着る服かもしれない、って思うわけだね?」

「そうだ」

「でもスカートはどうするのさ」

「実はイギリスには、キルトというスカート状の男性の衣服が存在する」

「えー」

「だから、男が着用するスカートというカテゴリがネギの脳内には存在すると思われる」

「つまり、セーラー服を男が着る水兵服に準じるものとして受容したとき、それとセットのスカートも男が着用する服の一種と受け入れてしまう可能性があるわけだね?」

「もちろん、男の水兵がスカートを履くわけではないが、異国の地にはそのような文化があっても受容できるレベルなのだろう」

「実際には、日本にそんな文化ないよ」

「そうだ。だから、カモの認識、委員長の認識、ネギの認識が全て違っていた可能性はあり得る」

「その結果どうなるんだ?」

「委員長が鼻血を吹いて倒れた時点で、即座にネギは軌道修正しなければならない」

「どういう意味?」

「落ち着いて話を真剣に聞いて欲しいのに、不適切な服装だと気付いたってことだ」

「自分が女装したって意識はあるの? 無いの?」

「そこは不明だ」

カモの意図 §

「カモはこの水準ならネギは女装を受け入れるに違いないと踏んで、セーラー服女装を勧めたのだろう」

「カモの趣味?」

「ただ、カモには男に喜ぶ趣味は無いと思われる」

「ネギの女装はカモの趣味ではないわけだね? でもネギの趣味でも無いとすると誰の趣味?」

「カモは、委員長への頼み事を円滑に進めるために、委員長の嗜好を推定した。だから、セーラー服女装とはカモが想定した委員長の嗜好なんだ」

「でも、実際は鼻血を吹いて倒れたよ」

「刺激が強すぎたんだ。だから、本当の委員長と、カモが想定した委員長も食い違っていたわけだ。だからカモも驚いている」

主題の回収 §

「しかし、これはキツネギの時の『女装する子供先生』という主題の回収であろうな」

「最終回に向かって驀進中ってことだね」

「しかし、これで永遠に『女装すると女の子より可愛い可憐な男の子』であり続けることになる。まさに、失われた妹の代わりに少年を囲い込むポーの一族的な誘惑にみちた結末だな」

「それって萌え漫画の結末じゃないよ」

「そうそう。ポーッとしてるとおいてかれるぜ」

「オチはダジャレかよ」

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