「やっと分かってきたぞ」
「何が?」
「ヤマト2199とSPACE BATTLESHIP ヤマトは何が違うのかということ」
「何が違うんだい?」
「その前に、違わないこと」
「違わないこと?」
「それは第1作のリメイクであること」
「確かにイスカンダルへの旅だね」
「そうだ。従って、ヤマト2199とSPACE BATTLESHIP ヤマトは競合関係にある」
「でも、アニメとVFXだよ」
「既にアニメと実写の境界線は存在しない時代なのだ」
「押井守的な発言だね」
「という前提から見た時、両者は比較可能なのだ」
「分かった。それで何が違うんだい?」
「宇宙戦艦ヤマトという作品は、既に指摘した通り、SFとミリタリーのハイブリッドキメラなのだ。それが怪しい魅力と分かりにくさを産んでいる」
「うん」
「ここで、リメイクするとき2つの方向性が出てくる」
「2つとは?」
「SF的な側面を重視する方法論と、ミリタリー的な側面を重視する方法論だ」
「それで?」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトは前者の道を選んだ。イスカンダル人やガミラス人が人間そっくりなのはSF的には是正されるべき重大問題なのだ。だから、デスラーは斉藤の体に乗り移り、最後は人型に結晶を集約してやっと人型になった。これがSF的側面の強化ということだ」
「じゃあ、2199は?」
「ミリタリーの側面を強化した。ミリタリーの世界では、敵も人間であることは当たり前の前提なのだ。しかし、多くの場合異言語を話し、異なる国歌を歌う。だから、ガミラス人はあくまで人間なのだ。そして、言語や国歌を作るという形で強化が行われる。ガーレ・ガミロン! 更に言葉遣いも海軍的なイントネーションに持ち込まれる。おもーかーじ」
「方向性が違うわけだね」
「そうだ。違う」
「なぜ違うの?」
「出渕総監督自身、ミリタリーの方が得意という要素はあると思うのだが、それだけでなく先行して公開されてしまったSPACE BATTLESHIP ヤマトとは違う路線を選ぶ必要があったとも考えられる」
「同じじゃダメなの?」
「ダメだ。なぜなら、同じ路線を進むなら後発である以上SPACE BATTLESHIP ヤマト以上にSF的な設定を先鋭化させる必要があるが、そこまで行くと超マニアしか理解できない世界に行く。たとえば、SPACE BATTLESHIP ヤマトのデスラーはまだしも理解可能な存在だが、もっと常識から逸脱する方向に行かざるを得ない」
「超マニアって、モビルスーツの名前を全部暗記しているようなタイプ?」
「そうじゃない。ガンダムが大好きなうちはぬるすぎ。超マニアとは、そうだな。たとえば、ロバート・L・フォワードの『竜の卵』とか『ロシュワールド』を愛好しちゃうようなタイプさ。もう愛読雑誌は科学雑誌」
「ぜんぜんワカラン」
「そう。面白いとか面白くないという以前に、一般人にはさっぱり分からない世界に突入するしかない」
「それは営業的に不味いってことだね」
「そうだ。売れないのでは、ただのマスターベーションだ。作った本人だけ気持ちが良くてもそれではダメ。そもそも企画が通らない」
オマケ §
「だから。SPACE BATTLESHIP ヤマトはかなりストライクゾーンぎりぎりの球を投げたことになる。これ以上動かすとボールになる」
「ボールになるとどうなるの?」
「マニア向けになって、いいか悪いか以前に理解できる人が激減する。そのボーダーラインぎりぎりまで行ったと思う」
「えー」
「だからマニア視点から言えば、SPACE BATTLESHIP ヤマトもまだまだぬるい。でも、それ以上は商品という観点からは行けない世界になる」
オマケ2 §
「じゃあ、質問するけど、『竜の卵』とかって好き?」
「昔は好きだった」
「科学雑誌は?」
「日経サイエンスは定期購読してる」
「じゃあ君は超マニアだと自負しているのだね?」
「いや。そうでもないぞ」
「えー」
「日経サイエンスを読みこなせているという自信は無いし」
「なんだってー」
「時代から振り落とされたくないので、せめて日経サイエンスぐらいはと思って読めないまでも見ているのだが、はたと気がついて振り返ると既に振り落とされた人の大群が……」
「それは怖いぞ」
「だからさ。大マゼラン星雲までの距離が16万8千光年と言われてもオーケーさ」
「なんでだよ」
「学説なんてどんどん変わって当たり前。科学というのはそんなもの」
「科学という奴の傲慢さが憎いのじゃないのかよ」
「科学の常識はこれまで何回もひっくり返っているよ。気に入らなければひっくり返せる余地がある。だから、科学という奴の傲慢さが憎い真田さんは科学者でいられるわけだ」
オマケIII §
「2012/4/11はヤマト関係だけで6個もエントリーを書いたという意味で記憶される日になる」
「なぜ増えたんだよ」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトのテレビ放送もあったが、DVDで沖田艦長のタヌキを10回も聞いたりしたから。あと2199も上映中の期間だ」
「ひぇ~」
「こんな日は滅多に無いよ」
SPACE BATTLESHIP オマケ §
「それにしても、SPACE BATTLESHIP ヤマトテレビ放映中はあれだけ騒がしかったのに、終わったらあっさり語りが無くなるのも変な感じだな。というか、せっかく放送されてもあら探しをした連中ばかりで、発展的に論を展開するような生産的な奴は多くないのだろう」
「ひぇ~」
「特に、アニメが当たり前で特撮を上手く咀嚼できないやつらは多いかもしれない」
「君はどうなんだい?」
「もちろん、サンダーバードで育った世代である以上、特撮で大オッケーさ」
「いいのかよ」
「チープな国産特撮も山ほど見てるしな。その程度のことでガタガタは言わないし、アニメ業界の有名人がスタッフにいなくても気にしない。特撮なんだし」
「じゃあ」
「地球をなめるなよ、宇宙戦艦ヤマトをなめるなよ、見参とか推参と言う言葉をライオン丸で学んだ世代をなめるなよ」
「ぎゃふん」
「見参、きらめく鳥ジュジャクはどこの空~♪」