「アメリカに、3DCGデータの販売サイトのDAZ 3Dというサイトがある。3DCGソフトのPoser等のデータを売っている」
「ヤマト関係ねえ」
「関係ないが、ヤマトが拓いた(とされる)アニメの末路が良く分かる事例なので、紹介するぞ」
「なんだよ」
「Anime Invasionというタイトルで来たDMの中身の閲覧サイトだ」
「Anime Invasionってどういう意味?」
「アニメの侵略という感じかな」
「見たぞ……。だけど、何かどこかでアニメを勘違いしてないか?」
「そうだな。動画にも使用できるが静止画にも使用できる人体データだ。アニメーションの一種としてのアニメというニュアンスは無い。それこそ、日本のアニメ風に描かれた女の子というぐらいの意味にしかなっていない」
「でも、ぜんぜん日本のアニメ風じゃない女の子もいるぞ」
「そうだ。でも、彼らはそれを『アニメ』と称することにためらいが無い」
「えー」
「これがある意味で『アニメの偽らざる現状』だ」
「なんだって!?」
「馬鹿なオタクがよく萌えキャラを戦闘機に描いておけば敵が攻撃できないに決まっていると言うけれど、別の文化によるキャラの受容が異質だとすると、それも怪しい」
「攻撃できない萌えキャラのデザインがそもそも違ってくるわけだね」
「まあそれに以前に、外国の一般人に萌えなんて全く浸透してないって話はあるけどな」
「ぎゃふん」
「もっとそれ以前に、軍用機に半裸全裸の女を描くことに関しては、こっちが先輩だとアメリカ人に嘲笑されるかもしれない」
「えー」
「地球をなめるなよ、宇宙戦艦ヤマトをなめるなよ、ヒストリカルな航空機モデラーをなめるなよ。飛行機模型に半裸全裸の女のデカールを貼ることに関しては、『痛機』なんてものが発明されるはるか以前から常識だったんだ」
「でもデカール小さいよ」
「馬鹿者。実機は巨大なんだ。小さいスケール機のデカールが小さいとしても本物は大きいんだ。そして、模型を前提に考える日本人と違って、やつらは本物を前提に考えるんだ。中古のムスタングとかベアキャット買ってエアレースやってる奴らをなめるなよ」
というわけで §
「かつてSFの世界には『浸透と拡散』という言葉があったが、アニメも世界に進出して『浸透と拡散』のプロセスを経て原型が良く分からないぐらい変化してしまったと思うべきだろうな」
「そうか」
「まだしも原型を知るヤマトファンは幸福なのだろう」
「プロトカルチャー?」
「それはヤマトネタじゃねえ!」
「ひー」
「結局、マッハGOGOGOとか、ガッチャマンのあたりを起点にロボに変形しない主役メカの系譜があり、ヤマトに至るのがアニメ文化の本流。しかし、ガンダムあたりからロボが注入されてどんどん浸透と引き替えに中身が薄くなり始めたと思うべきだろうな」
「そうか」
「最後の妥協点がジェッターマルスだったような気がする。戦闘的なロボットだけと思い悩む。でも、その流れは未来につながらなかった。いや、思い悩むロボとしてはジェイデッカーあたりにつながるのか? でも、その流れもジェイデッカーで途切れたかな?」
「トランスフォーマーがあるじゃないか」
「既に逆輸入文化だな」
「確かに」
オマクロス論 §
「そうか。マクロスというのは、原型文化を知る最後の世代が作ったアニメということか」
「なんでそうなる」
「マクロスはヤマトを産み出したスタッフの一部となるスタジオぬえのタイトルあり、プロトカルチャーが濃厚に残っていたと思われる。中学生の美樹本晴彦がぬえでヤマトの資料を漁ってたりする過去があるなら、おそらくそこがプロとカルチャーを味わった最後の世代」
「でも、美樹本晴彦さんって、安彦良和さん系だよ」
「安彦良和さんもヤマトのスタッフの1人だ」
「結局、ヤマトにつなるのか」
「安彦良和さんはヤマトに批判的な立場だから、その人を師匠と扇いだら批判的な立場も継承されるのかも知れないが、プロトカルチャーを知っていることは確かだろう」
「そうか」
「監督の石黒昇さんもヤマトの主要スタッフの1人だし、結局マクロスにはプロトカルチャーの最後の残沙が残る感じなんだろう」
「だから、マクロスは文化対立が軸になるわけだね」
「だが、壮大な戦闘システムより女が強いというミンメイアタックで世界が矮小化してしまった。結局、女さえいればいい、という世界観に縮小した」
「ヤマトは?」
「森雪は紅一点とかいうから、常に女は貴重品で最後まで緊張感が持続した……と言いたいが、スカートめくりを忘れたアナライザーのおかげで緊張感は少し落ちたかな」
「スカートめくりかよ!」
「わかった。ヤマトとマクロスの差」
「なんだよ」
「スカートをめくるのがヤマトで、落下するミンメイのめくれたスカートにいちいち修正を入れてパンツが見えないようにしてしまうのがマクロス」
「ぎゃふん」
「どっちが強いか一目瞭然」
「瞭然じゃねえ!」