「はははっ」
「ご機嫌だね」
「最高に良かったよ」
「ヤマトが聞けたから?」
「ノー! アコースティックヤマトが聞けたから!」
「は?」
「順を追って説明するが、1つだけ先に言っておく」
「なんだい?」
「ヤマトを期待した客は全員肩すかしだったろう」
「なんで?」
「アコースティックヤマトはそもそもヤマトとしては肩すかしだからだ」
「えー。君はいいのかよ」
「いいのだ。むしろ期待していなかったけどとても聴きたかったヤマトだ」
サントリーホール §
「サントリーホールなんてぜんぜんしらへんでー」
「こっちも知らない」
「でも結局アークヒルズの一部で、難しいことは何も無かった」
「ぎゃふん」
サンダーバード §
「コンサートあるある話」
「何?」
「分厚いチラシの束をもらってしまう」
「どんなチラシ?」
「目に付いたのは7/28の宮川彬良さんの新日本フィルとのコンサート(文京シビックホール)のチラシ」
「ヤマトは?」
「曲目の1つにヤマトがある」
「それだけ?」
「いいや。サンダーバードもあった。鞄の中に読みかけのサンダーバード本があったから偶然にびっくりだ」
「えー」
「他にはヤマト2199第二章のチラシも入ってたよ」
「他には?」
「多すぎてほとんどまだ見てもいない」
「ぎゃふん」
内容 §
「まず踏まえるべきことは、集客の目玉としてヤマトをやるものの、このコンサートは基本的に古澤巌+TOKE Civic Wind Orchestraのものということだ。一部楽曲に宮川彬良が参加するわけで、参加しない曲も多い。ましてヤマトに関係ない曲も多い。この点はきちんと踏まえる必要がある」
「ならなぜ君は嬉しそうなんだい?」
「リズムが凄くよかったからさ」
「なぜいいの?」
「うむ。それは考えた。通常のクラシックコンサートは通常のオーケストラが前提になるのだが、実は今回は吹奏楽団にソロのバイオリンが付くという変則形態なのだ。更に、彬良さんが来るとピアノが付く」
「それで?」
「実は、吹奏楽というのは、個々の楽器の音の変化が乏しいのではないか。それゆえに、メロディーよりもリズムを深化させる必要があるジャンルではないか、と思った。そこに、極めて芸達者で表情豊かなソロバイオリンが付くともはや最強のリズム天国」
「なぜバイオリンはソロが最強なの?」
「自由自在にリズムを豊かにしていくには、一人で突っ走るしかない。過去にも、これは凄いと思うソロバイオリンは聴いているし、やはりバイオリンはソロになると表情が違うような気がする」
「へー」
「だからさ。リズム的に大満足のコンサートであったよ。目から鱗だ」
「交響楽団より管弦楽団ってことだね」
ヤマト §
「自分に限ればヤマト的には納得が行く内容であった。その理由は、2つある」
- 古澤巌さんは少し大きくなってからヤマトをリアルタイムで見ていた人で、ヤマトが身体に染みついて分かっている。その人がバイオリンでリードする
- 古澤巌さんがホストで、宮川彬良さんがゲストなので、宮川彬良さんの思い入れが1人で暴走して飛び出していない。少し小さくなっているので、むしろバランスが取れている
「そうか。もともとヤマト知ってる人なのか」
「そうだ。しかし、それが前面に出てきて驚かせてくれるのはやはり2199効果だろう」
「無知との遭遇という奴だね」
「そうだ。まさに、いろいろな人が2199を契機に思いもよらないヤマトトークを語り出した事例の1つと言える」
アコースティックヤマト §
「さて問題がこれだ」
「順を追って話してくれよ」
「当初、交響組曲再現プロジェクト的なことをまたやるのかぐらいの軽い気持ちであった。しかし、会場で渡された演目を見て目が点。なんとヤマトじゃなくて、アコースティックヤマト(~序曲から無限に広がる大宇宙~大いなる愛~イスカンダル~宇宙戦艦ヤマト(砂漠の川バージョン)~)と書いてある。砂漠の川バージョンなんて、まさにアコースティックヤマトだよ」
「それで?」
「大多数が期待しているヤマトじゃない。でも、ひそかにアコースティックヤマトを愛聴していた自分には興奮ものだ」
「そうか。君はアコースティックヤマトが聴けたからそれでいいのだね?」
「そうじゃない。CDのアコースティックヤマトには食い足りない部分があるけど、実はCD以上の名演奏。最高だね。文句の無い最高のアコースティックヤマトを聞けたのだ。これ以上の喜びは無いぞ」
「えー。つまり、アコースティックヤマトが聞けたから嬉しいのではなく、最高のアコースティックヤマトだったから嬉しいのか」
「そうそう。でも、アコースティックヤマトって聞くにはバリアがあるの」
「バリア!」
「ヤマト限界なんだよ。これ以上進むとヤマトじゃなくなる限界領域にいるヤマト。かなりきわどいから入るのにも一苦労するはずだ」
「だから、そこには簡単に入れないわけだね」
「でも、おいらにはそれでいい。なぜなら、既にその領域に立っているからだ」
「ひー」
「そして最後にいきなりみんなが待ってるヤマトを演奏したから、それほどぶーぶーと文句は出ていないような気がするけどな」
ブラバンとヤマト §
「応援などに借り出される吹奏楽団の定番の1つが宇宙戦艦ヤマトかもしれない、と思うと、それほど距離感はもともと無かったのかも知れない」
「なるほど。そういう見方もあるわけだね」
「本当かどうかは知らない」
欲望という名の電車 §
「問題は、アコースティックヤマトがこれ以上進むとヤマトじゃなくなる限界領域ということ」
「そこから先は行けないってこと?」
「違う、そこから先の世界はある。事象の地平線の先にも宇宙はあるのだ」
「じゃあ、そこには何があるの?」
「欲望という名の電車があったのだ」
「なんじゃそりゃ」
「彬良さんの音楽として、欲望という名の電車のダイジェストがあったが、これがヤマト限界を超えた事象の地平線の向こうにある音楽だろう」
「どういうこと?」
「このコンサートはヤマト限界の向こう側から一時的に里帰りしただけのものであり、ヤマト限界の向こう側の人が、ヤマト限界の向こう側のルールで作ったものということだ」
「具体的にどういうこと?」
- サプライズゲストに松本先生は来ない
- サプライズゲストでささきいさおは歌わない
- ヤマトの映像をバックに上映したりはしない
「ヤマトらしくないね」
「そう。そこはもうヤマトの世界じゃないし、ヤマトファン向けの構成でもない。ただ単に集客の目玉にヤマトと3文字書いてあるだけの世界」
宇宙戦艦ヤマト4 §
「しかし、欲望という名の電車を聞きながら思ったのだけど、これを宇宙戦艦ヤマト4のBGMと言っても意外と通りそうな気がした。音からヤマト的な映像が思い浮かぶ」
「えー」
「だからさ。2199の音楽はちょっと食い足りない気がするのだけど、それは彬良さんの本来のフルパワーじゃなくて、ヤマトということで小さく丸め込まれてしまった部分があるのではないかと思うわけ。そこで、ヤマトという制約を取っ払うことで、もっと先に行ける余地があると感じたのだな。そして、ヤマト的には宮川泰メロディーに固執するよりも、もっと先に進むことが重要だろうと思うわけだ。実際に、他の誰かがヤマトのメロディーを新規に作り出している事例は多い」
「ヤマト世界だけ見ていると分からない広い世界はあるってことだね」
「少なくともこのコンサートで聴いた宮川彬良音楽のスケール感は、他のミュージシャンのヤマト音楽にまったく引けを取らないと思った。これは大発見」
結論・一瞬で終わる §
「というわけで、休憩を挟んで前半と後半。前半の最後がヤマトなので、それが終わったらもうあとは『払った金がもったいないから聴くだけ』かと思ったら、中身が凄くて一瞬で終わってしまった感じだ。凄く聴き応えがあって、おもいっきり真剣に聞かされてしまったよ」
「じゃあ、結論としては良かったんだね?」
「凄く良かった。目から鱗が落ちまくり。古澤巌のバイオリンも吹奏楽団も良かったし」
オマケ・ヤマト魂 §
「ヤマト魂が入った瞬間、楽団の音が変わったという話はいいね」
「入ってたの?」
「もののけ姫やディズニーまでヤマト魂入りで演奏したようだぞ」
「ぎゃふん」
「そういう意味では全体を通してヤマト・コンサートだったのかもしれない」