「特撮映画史上おそらく最高の異色作になるはずだということで、どうしても見たかったのだ。なので僅かに時間のゆとりができたときに強引に見てきた。夜の最終上映だ」
「なぜ異色作になると思ったの?」
「総勢485人のヒーロー&敵なんて誰も覚えきれない。90分に満たない映画で活躍させるのはほぼ不可能」
「実際に異色作だった?」
「実は意外にも凄く面白かった」
「なぜ?」
「総勢485人は、ほぼいるだけだった。実質的にこの映画はゴーカイブルー、ゴーカイグリーン、オーズの怪力ねえちゃん、ディエンドの4人で進行する。つまり戦隊映画の定番であるレッドとレッドの話ですらなくて、脇役級のキャラがメインになる話ということだ」
「そこがいいの?」
「そこがいいのだ。トリックスターのディエンドと生真面目なゴーカイブルーが絡むからドラマになる。ディエンドのポジションは本来ならマベちゃんが担うはずの場所だが、この映画ではガレオンに乗っていない」
面白いゴーカイジャー話 §
「結局、この映画はゴーカイジャーが軸になるわけだ。ゴーカイジャーは後半面白さが落ちたと感じていて後悔があったが、それを払拭する面白いゴーカイジャー話であった」
「後半ってゴーカイシルバー参入後?」
「事実、この映画ではシルバーはほぼ活躍しない」
ディディディディエンド話 §
「しかし、全体のストーリーを見るとディディディディエンド話なんだよね」
「いいのかよ。主役ライダーですらないぞ」
「いいのだ。電王トリロジーで主役を張ったこともあるし、ディエンド話ってことでOKだろう」
「えー」
「逆に言えば、トリロジーのトリで電王関係者とディエンドが絡んでいるので、プリンでデンライナーを呼ぶ展開に無理が無い」
「プリンで呼べるのか!」
「モモタロスをな」
「ひ~」
「しかし、デンライナーに乗っているゴーカイブルー、ゴーカイグリーン、オーズの怪力ねえちゃん、ディエンドの4人というのはやはり凄い絵だ」
「違和感バリバリ?」
「違和感が無いから凄い」
レッド対決 §
「ディエンドは青いが、ディケイドは赤い」
「そうだね」
「だからディケイド対ゴーカイレッドはレッド対決になる」
「うん」
「こうなると、レッド対決は敵を騙すフェイクで、死んだふりをして復活して逆転というのがお約束だ。昔のシンケンジャーの映画もそうだった」
「それで?」
「だからレッド対決になった時点で結局お約束かと思ったらディエンドがかき回してくれて良かった。そこは読めなかった」
「映画は読めない展開をやってこそ映画ってことだね」
鳴滝登場 §
「いいぞ鳴滝。やっぱり鳴滝は重要だ」
「いつも最終的にどこに行ったか分からない鳴滝はまだここにいたんだね」
「今回も最終的にどこに行ったか分からないぞ」
宇宙キターーーー §
「フォーゼも乗ったゴーバスターズのロボが、イトカワを超えて土星でUターンしてスイングバイで加速。ドリルキック。物理的には無理があるけど、悪くないね」
「なぜ悪くないの?」
「大人っぽくてシリアスなゴーバスターズと、JAXAが出てくるようなフォーゼだからこの展開ははまる。他のヒーローでははまらない。ゴセイジャーとか世界観がファンタジーだし」
「なるほど」
大ショッカー首領 §
「そういえば、ディケイドって昔の映画でも大ショッカーの首領だったんだよね。ライダー同士でつぶし合うバトルをさせた張本人」
「だから、ディケイドではまる映画ってことだね」
野球仮面 §
「1976年で待っている怪人は野球仮面。ゴレンジャーで最高人気の怪人ということだろう。おいらも好きだ」
「いいのかよ」
「人気で言えば、野球仮面か機関車仮面だろうな」
「えー」
5人揃わない戦隊もの §
「おいらが見たかったもの。それは5人揃わない戦隊ものだ」
「えー」
「だから、この映画は非常に良かったぞ。ゴーカイジャーの6人中1人は敵の首領。3人はあっさり神隠し。残った2人は赤の他人との付き合いを強要されちゃう」
「そこがいいのかよ」
「うん。ディケイドとゴーカイブルーが対立してグリーンがおろおろ。いいね。それが人間のドラマだ」
ナンパ §
「戦闘中に戦隊の女の子を軟派しているウラタロス。いいねえ」
「ひ~」
夢のカード §
「エレキステイツ対デンジマン、なんて夢のカードじゃないか」
「なんで? 過去にもライダーと戦隊の共演はあったのだろう?」
「ディケイドがシンケンジャーの世界に行っているね」
「じゃあなぜ夢のカードなの?」
「通常、時代が近いヒーローしか共演しないからだ。エレキステイツは現在進行形のフォーゼのステイツだが、デンジマンは恐ろしく古い。こんな映画でも無い限り成立しない」
悪の華 §
「悪役そのものになった門矢士とマベちゃん。これ最高だね」
「えー」
「やはり元々大ショッカーの首領だった門矢士と、海賊のマベちゃんだからできること。他のヒーローでは無理だろう」
新しい友情 §
「フォーゼとゴーバスターズが友情を結んでいるのは新しい展開を予感させるね」
「どのへんがいいの?」
「リアルさと虚構のバランスが比較的に似通っているので、この2つの作品は相性が良いのかも知れない」
まとめ §
「まとまるはずの無いネタをまとめた超イロモノ映画という予測は肩すかしで、素直に面白かった。構成的な無理も少なかった」
「面白かったから良かったと思うべきなんだろう?」
「そうだ。ただ、若干の肩すかしという気分はあったかもしれない」
「でも面白かったのだろう? 見たかった話なんだろう?」
「そうだ。ゴーカイジャーの面白い話は見たかったからこれでいいのだが、期待とは、若干ずれたかもしれない」
「ずれた結果、見たかった映画になったんだろう?」
「そうだな。しかし、これだけの映画はおそらく30年に1本も無理じゃないかな」
「特例中の特例ってことだね」