2012年05月17日
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魔法先生ネギま!(38) (講談社コミックス), 赤松 健, 講談社

Written By: 川俣 晶連絡先

「無難に軟着陸させたな、というのが感想だ」

「なんか世間は非難が多いらしいぞ」

「他人は知らない」

「じゃあ、君はなぜ無難だと思うの?」

「最悪の状況は回避できたから」

「最悪の状況って何?」

「やることが終わっているのに、次々と敵が出てきて終わらないこと」

「もう終わってるの?」

「ネギの話はフェイトと和解した時点で終わってる」

「じゃあ、そこから引き延ばさないことがいいことなの?」

「そうだな。あとはエンディングに向かってまっしぐら。それでいい」

「伏線が回収されていないと文句が出ても?」

「やることが終わってるのに伏線回収のために話を続けるのは本末転倒だ」

「伏線は回収されないの?」

「そうとも言いきれない」

「なんで?」

「『ネギの話は終わっている』という問題と、この作品世界の誰かの物語が終わっているという話は別だからだ」

「じゃあ、別の誰かを主人公にしたマンガが続きうるの? なぜそう言いきれるの?」

「カバーの折り返しの作者コメントと、38巻の構成そのものがそれを物語っている」

「構成? どういうこと?」

「実はこのコミックは353時間目で終わっているのに、更に354時間目355時間目が存在する。そして、354時間目はネギも夕映以外のクラスメートも出てこない。純粋に夕映が主人公の話として構成されている。しかも、夕映は他者なのだ。あくまで事件を依頼に行く子供達の視点で構成されている。こういう話はありなんだよ。これからも続きうるんだよ、という分かりやすい説明になっている」

「まさか」

「そして、355時間目にはクラスメート全員のその後のダイジェストが書かれているのだが、実はここにいくらでもドラマがあり得ることが示唆される。軌道エレベーターのエレベーターガールというだけでも1つのコミックになり得る」

「ホテルマンだけでマンガが成立する世界ならそれもありってことだね」

「だからさ。355時間目のポイントは全員のその後を説明することなので、同窓会というテーマが良いわけだ」

「全員集合が示唆されるわけだね」

「でも、それは逆から見れば、みんな別々の道ということだ。バラバラのみんなには、個々の独自の物語があり得て、それはそれであっても良いということだ」

「しかし、それは既に『魔法先生ネギま!』ではないわけだね?」

「営業的な理由でそう名乗る可能性はあるかもしれないけどな」

「ぎゃふん」

「実際、陸奥圓明流外伝と同じような意味で魔法先生ネギま!外伝が出る可能性は十分にあり得るだろう」

「陸奥圓明流外伝だと主人公も状況も脇役もどんどん変わっていくけど、同じような世界に行く可能性があるわけだね」

超の扱い §

「超の扱いは割と上手かったと思う。再見できた」

「かなりご都合主義だよ」

「それはいい。どうせ時間旅行した時点で踏み込んでしまった世界だ」

「えー」

「あとは、悪ノリしてばつが悪いエヴァンジェリンとか、最後の最後でキーマンになる四葉さつきとかね。あのへんも悪くなかったと思うよ」

「さっちゃんか!」

「あと、大人になった夕映が無駄にミニスカを履いてないズボンファッションなのも良かったね」

「脱がされちゃうけどね」

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