「しばらく前に出ていたのだが、本屋でさっぱり見かけなかった。よほど売れていないようだ」
「つまらないの?」
「べらぼうに面白かった」
「なぜ売れないの?」
「理由が良く分かった。エネミーの問題だよ」
「エネミーとは敵のこと?」
「そうだ。最大の敵は自分自身。自信過剰は悪。己を知ることが重要だってことだ」
「それがなぜ売れない理由になるの?」
「今時の風潮は、自信過剰の肯定なんだよ」
「自信過剰で痛い目に遭わないの?」
「通常、自信過剰に振る舞えばしっぺ返しが来る。しかし、今時のネットではしっぺ返しが来ない」
「どうして?」
「名無しさんにどうやって文句を付けるのだよ」
「えーと」
「だから、ネットは己を知らない子供でいっぱいさ」
「それがネットの世論ってことだね」
「だから、自分こそがエネミーにならない。自分を痛めつける遠因に自分がならないわけだ」
「えー」
「それゆえに、自分がエネミーである可能性を暴露する作品など、彼らの世界観にあってはならないものだ。それを指摘することは不愉快な大きなお世話にしかならない」
「それでいいの?」
「良い訳が無い。いずれ、逃げ切れない時が来て痛い目に遭う」
「時間が掛かるだけだね」
「いいや」
「違うの?」
「子供のいたずらで済まされない年齢になって大きな事件を引き起こしてしまえば致命傷もあり得る」
「ひ~」
「じゃあ、結論を言おう」
「なんだい?」
「CAPTAINアリスは7巻もやはりべらぼうに面白かった。世間が無理解であろうともね」
「それが君の結論?」
「そう。これが自分の感想」