「最近気づいたのだが」
「なんだい?」
「近代日本奇想小説史 入門篇に関連して検索したら、こういうコラムがある」
コラムより
他の誰かがちゃんと〔日本SF史〕を書いてくれるだろうと思っていたんですが、誰も書いてくれなかった。仕方なく自分でこれをやり直しておいたほうがいいだろうというのが、この本を書いたきっかけです。
「これなんか、もう言ってることが同じ過ぎて泣けてくる」
「同じってどういうこと?」
「そもそもさ。自分が郷土史の世界にずぶずぶ入ってしまった理由は、玉川上水下高井戸分水にある。誰かが全ての疑問に明快に答えてくれれば実はここまで深入りはしていない」
「そういう本は無いってことだね」
「厳密に言えば、それに触れた本がないことも無い」
「じゃあ、それでいいじゃないか」
「そういう本には記述に疑問があるのだよ。片手間のおざなりの調査だけで書いているような空気もある。厳密には納得して終わりにできない水準だ」
「それでどうなるの?」
「結局、下高井戸、高井戸全体、ある程度の周辺地域、と拡大して、それらの問題も扱わねばならないことになる」
「杉並全体とか、東京全体には拡大しないの?」
「そこまで広げてもあまり意味は無い」
「広げてもやっぱり分からない訳だね?」
「そう。良く分からない」
「どうしてそうなるの?」
「高井戸町が杉並区の一部になった時点で、主体的な『高井戸』は消失したのだろう。だから、高井戸史のような本が作られることも無いし、専門に研究する人もおそらく皆無に近い」
「高井戸宿の本とか、杉並区立郷土博物館から出ているじゃないか」
「非常に限定的な情報しかない」
「つまり、それだけでは満足できないわけだね」
「かといって、どこまで史料があるのかといえば、それも怪しい」
「そもそも史料が無いってこと?」
「そうだな」
「じゃあ、君が納得する結論は永遠に無理じゃないか」
「かもしれない。しかし、あがいていると徐々に認識が深まっていくのも事実なのだ」
「じゃあ、もうちょっとあがいていてくれ」
「そうするさ。楽しいからな」
他にも §
「他にも国会図書館にも無い本が日常的に必要とされるとか、なんか良く分かるなあ」
「えー」
「郷土史になると対象が細かすぎて、国会図書館から漏れてしまう本がぽろぽろあるのだよ」
「本当に?」
「たとえば以下の本。国会図書館にも無い」
- コミュニティ「おちあいあれこれ」発行の「神田上水一枚岩の謎」(平成10年)
「これは何?」
「妙正寺川と神田川が交わる場所に近い川底にあったと言われる岩について書かれた本らしい。詳細は不明。現物にまだ行き当たってないのだからしょうがない」