「まず表紙に惚れたね。凄くバランスのいいデルタ翼機。イデオデルタなんてめじゃない。しかし、機種が分からなかった。グリペンだった。結局、この角度からグリペンをきちんと見たことが無かったのが敗因。ドラケンならこの角度でも分かっていた」
「ドラケンなら良かったのにね」
「ところが、ドラケン、ビゲンどころか、もっとマイナーなスエーデン機まで作例がずらっと並んで嬉しいぞ。SAAB J21の作例まであって、本当に自分も作りたくなったぞ」
「スエーデン好き?」
「そうだな。航空機メーカーとしてのSAAB好きだしJ21も好きだし、ドラケン紫龍とか男は黙ってドラケンとかネタを飛ばしていた過去もあるからな」
「なんだそりゃ」
「あとは秘密基地の図解とか、本当に分かってるな。いきなり、子供の頃のワクワクタイムに戻された感じだ。ARIIのドイツ軍秘密基地をワクワクしながら作って、上のパーツを外すと秘密の中身が見えるような気分だね」
「フィクション?」
「ノンフィクションだから、スエーデンは凄いぞ」
「相変わらずおねえちゃんもインパクトがある。ノーズアートとかなり乖離している感じもあるが、まあこれでいいのだろう」
「なぜいいの?」
「実際に航空機に乗ったパイロットの煩悩はこんなものだから」
「えー」
「それに予算も都合もあるだろうしね」
「そうか」
「ヤマト的に重要なのは天神英貴のインタビューだろう」
「天神英貴って誰?」
「インタビューでひたすらマクロスの話をしている人」
「ヤマト関係ないじゃん」
「このインタビューは関係ないが、実はディアゴスティーニのヤマトメカニカルコレクションでイラストをとても多く描いている人。そう思えば、バリバリのヤマト関係者」
「えー」
「というわけで、本題。小林誠さんの飛ぶ理由」
「それで?」
「最初のページを見て、インパクトはあるのに、何がどうなっているのか分からない。これは一体何なのか。という印象だけで5分は悩む傑作。文章を読んでいって、やっと理解できるが、その前に写真を見ながら5分ぐらい硬直する」
「そうか」
「しかもあの空中戦艦大和(完成形)も出てくるし、何か聞いたようなことを言う技術士官は乗っているし、ともかく設定もビジュアルも壮絶」
「それで?」
「とてつもなく突き放した視線でスケールのでかいイメージを描いているのだが、揚力システムとか、瞬間物質移動機械の名前でちゃんと異世界から戻って来られるのが凄い」
「どんな名前?」
「そいつは見てのお楽しみだ」
「えー」
「ページの最後の方に日本語の説明がないイラストがあるのだが、実はページの上の方に日本語説明が補ってあるイラストがあって、言葉が分からなくても意味が分かるようになっている。デザイン性と分かり易さを両立させていることが、よく読むと分かる。一線以上に踏み込んでくる読者にはとても優しい」
「そうか」
「それに、敵が残虐であることが明らかになった後、なぜ残虐なのかその理由が分かるように敵国人のイラストがあるのも構成がいいね。ちゃんとストーリーがある」
まとめ §
「小林誠さんの作品を見るためだけに買ったのだが。他にも見所が多くて凄く納得した。買って他のページが無駄にならない」
「じゃあ、100点?」
「それ以上。200点あげよう」
「じゃあ、それが結論だね」
「いや。小林誠さんのページのインパクトが予想の2倍ぐらいあったので、+100点」
「合計300点かよ」
「読むページが本の数ページなら500円でも高いが、これだけ読むページがあると千円超えても高く感じないな。財布は寂しくなったけど」
オマケ §
「ドラケン紫龍ってことは仲間がいるの?」
「いるぞ。たとえばフェニックス一輝。フェニックスミサイルを有人に改造して乗っている」
「ありえない!」
オマケ2 §
「突然アピールしたくなった」
「未組み立てじゃアピールにならないよ!」
「いっそ、これを機会に作っちゃおうかな。いいキットも新規に発売されたみたいだし、もうへろへろ組んでも許されるだろう」
「作る前からへろへろ確定かよ」
「ちなみに、うろ覚えの記憶では、下北沢のサニーで買ったキットだぞ」
オマケは死んだ §
「『オタクはすでに死んでいる』を読んだが、これは微妙な……」
「どうして微妙なの?」
「この本の中身は、『諸君らが愛してくれたオタクは死んだ。なぜだっ』という語り口なのだが、こっちはオタクを愛してない」
「愛してないって、どういうこと?」
「本当は好きなのに、ツンとしている……わけではない」
「えー」
「たとえばさ。メイプルタウンネットワークとかパソコン通信の初期の時代のアニメファン向け草の根ホストがあるわけだ。そこに行ってハローレディリンとかジーンダイバーを語りたかったけれど、それって想像を絶する少数派だったのよ。これってどういうことか分かる?」
「オタクの主流派とはまったく言いたいことが違ったわけだね」
「うん」
「それでもオタクを否定しなかったのだろう?」
「だからさ。オタクってある意味で便利なんだよ。オタクが存在するおかげで、欲しいものが手に入りやすくなる状況は確かにあった。その手のショップに行けば、欲しいものが存在する確率は比較的高かった」
「でも、大多数は欲しくもないものだったのだろう?」
「まあな」
「だからさ。『諸君らが愛してくれたオタクは死んだ。なぜだっ』と言われたときに『坊やだからさ』とも言えない。別にお友達だったわけでも無いし、わざわざ殺したわけでもない。『何をいうか』といきり立って糾弾する白目のない敵でもない」
「じゃあ、『これが敵……』と呆然とみている感じ?」
「実は敵ですらない。ねじれの位置にいて、接点すらない」
「えー」
「たとえば、自分が生まれて初めて劇場で見たアニメーション映画は海底3万マイルだけど、これをきちんと正面から語れる人はとても少ないよ」
「またマイナーな。せめてそらとぶ幽霊船なら宮崎ファンがゴーレムを語ってくれるのに」
「ちなみに、深い意味も何も無くたまたま軽く言った言葉で相手が硬直して返事が戻って来ない、という現象はこちらも何回も経験があって、みな同じかと納得した。そこは面白かったぞ」
「ひ~」
「念のために補足するが、この本に出てくるSFの死に荷担したのはガンダムだけだと思うなよ。ヤマトだって、荷担してるからな」
「ひ~」