2012年07月12日
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三百字小説『魔境のマコちゃん』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 魔境の奧に住む肌が白いイケメン王子は、大の魚好きで、自ら海に出て漁をしていた。そこで、人魚のマコはその王子に恋をした。

 マコは魔女に頼んで人間の姿になると艱難辛苦を乗り越えて王子様のところにたどり着き、大恋愛の末両思いとなった。

 マコはついに自分の正体を明かす時が来たと思った。信頼で結ばれた2人は、隠し事があってはならない。

 「君がたとえ男でも僕は君を愛する自信あるよ」と王子は言った。

 「じゃあ、この姿でもきっと平気ね」

 マコは魔法を解いて人魚の姿に戻った。大の魚好きの王子様は、人魚が嫌いなわけがない。即座に「素晴らしい!」と言い、その日の夕食に残さず全部食べてしまった。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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