「パーティーは終わりだ」
「なんだよその言い方は」
「7月の宇宙戦艦ヤマト祭りはこれにて終了。気持を切り替えるためにも今日は映画を見ようと思っていた」
「それでなぜメリダ?」
「ポケモンでも良かったのだけど、目先を大きく変えたかったので、洋画のCG映画にした」
「目先か」
「それにだな」
「それに?」
「メリダって宣伝を見る限り潰れた横長の顔でもじゃもじゃの赤毛で凄く可愛くないじゃない?」
「可愛くないから見たくなったのか!」
感想 §
「どうだった?」
「だがしかし、いくら1000円日とはいえ、平日の昼間の吹き替え2D上映が満席になりそうな勢いだったので焦った。慌ててネットで席を確保した。人気は高いようだ」
「なるほど。中身はどうだった?」
「短編をいくつか上映してから開始。短編はどれも面白かったぞ」
「では本編は?」
「当初、昔ながらのお姫様と悪の魔法使いというよくあるストーリーを漠然と想像していたが裏切られた」
「えっ? 違うの?」
「そうだ。主人公は姫だが、感性はもっと庶民的で戦うアクションヒロインだ。魔法使いは出てくるが悪人ではない。というか、悪人が基本的に出てこない映画だ」
「悪人が出ないで話が成立するの?」
「そうだ。主人公が間違いを犯し、その結果意図せざるおかしな状況に陥り、その間違いを回復するのが基本的なストーリーラインだ。だから、魔法使いに悪意は無い。単に物忘れで注意点を伝え忘れただけなのだ」
「でも、それによって物語が転がってしまうわけだね」
「そうだ。そこは上手い工夫だ」
「もはや、白雪姫に毒入りリンゴを持ってくる継母はいないわけだね」
「この物語は、お転婆であまりおしとやかでは無い赤毛のもじゃもじゃ頭の姫が、行動を制約する母親と対立するところから始まる。ちっともロマンチックじゃない。そこは良い点だ」
「いいのかよ」
「だって、いかにもお姫様らしいお姫様の話とか、いかにも悪の魔法使いらしい魔法使いの話なんて今さら感情移入できないし」
「じゃあ、この映画の見どころはどこだよ」
「実は熊だ。熊の面白さは絶品。見たら分かる」
「姫よりも?」
「そうだ」
「他には?」
「WikiPediaに『10世紀頃のスコットランドを舞台とする』と書いてあるのだが、もっと早く気づくべきだった。何回も出てくる石柱の輪はストーンヘンジだよ」
「良い返事だ」
問題点 §
「じゃあ、あえて聞くが問題点は無かった?」
「強いて言えば、三つ子の位置づけが曖昧かな。キャラが立っていないというか。可愛いだけというか」
「他には?」
「結末はちょっと安直かもしれない。友達のような仲良し母娘という構造に落とし込まれて終わるが、これは21世紀的な価値観で『10世紀頃のスコットランドを舞台とする』映画の結末としてはやや浮いているかな」
まとめ §
「この映画をひと言で言うと?」
「危機を乗り越えることで、母親は自分のやり過ぎを反省して娘の生き方を承認し、娘はいつの間にかあれだけ嫌がっていた母親の語りと同じ事を自分の口から語れるようになっている。その変化が面白いところだな」
「変化か」
「そうだ。主人公が変化するのは当然なのだが、母親も大きく変化するのが大きな特徴だな。この映画は娘の話であると同時に母親の話でもある」
オマケ §
「三つ子は勝手にトン吉、チン平、カン太と名づけた」
「違うだろう。トンチンカンじゃないだろ」
「ダメかな? じゃあヒューイ、ルーイ、デューイってことで」
「WikiPediaによるとヒューバート、ヘイミッシュ、ハリスだよ」
「ヒューしか合ってないか」