「BD-BOXのオーディオコメンタリーで気づいたこと」
「なんだい?」
「当時はアニメ誌が存在せず、アニメの本も出ないし、映像ソフトかもない。DVDどころかLDもVHSも映像ソフト販売の方法として存在しないし、まして全話収録という可能性も無かった。せいぜいソノシートだよ」
「ソノシートだとどうなるの?」
- 音声のみ
- たいてい新録 (TV放送と違う)
- 短い
- 長期保存に向かない
「それで?」
「その状況下で再放送も保証されず、保存しなければ喪われると思った初期のファンが保存に動いたわけだ」
「なるほど。保存ね。何でも溜め込んでゴミ屋敷を作るオタクの行動原理の原形がそこに見えるわけだね」
「ただ、その時点での行動の合理性はあったわけだ」
「今は無いわけだね」
「と言いたいが、実は映像ソフト化されず忘れ去れていくアニメは実はけっこうある」
「それを追求する限り、まだ合理性はあるわけだね」
「でも大半のオタクはそんなものは追いかけていない」
「ぎゃふん」
産廃問題 §
「アニメの制作過程で出たセル画等の多くの残留物は基本的に産廃だ。しかし、それを大切にしてくれるファンがいれば好意的にあげてしまうのも事実だったのだろう。ブームになると話は変わってくると思うけどね。値段がついて売れるものなら、売るからあげるな、という話にもなる」
「セル画には値段が付いているものね」
「デジタル彩色になって存在しないはずのセル画まで作って売るからな」
「ぎゃふん」
「だからさ。そういう意味で、当初保存的な趣味は実はそれほどコストを掛けないで可能だったわけだ」
「初期の時代はだね」
「そうだ。しかし、それに値段が付くとどんどんコストアップしていった」
「しょぼい作画のテレビアニメ2回分がウン千円とかいうDVDが発売されてしまうわけだね」
「それでも売れた」
「なぜ売れたの?」
「さあ。そこまでは知らない」
「そんなオチかよ」
「いや。そんな出費がいつまでも続くわけがない。そこで揺り返しが来る。これがネットの泥棒体質の遠因だろう」
「そんなに高いのはおかしいと思う人が出てくるわけだね」
「折しもネットの高速化とPCの大容量化が進んで、アニメも簡単に劣化無く交換保存できるようになった。DVDとかの表面にも簡単に印刷できるようになった」
「買うより自作のDVDの方が良く出来ていると豪語できるようになったわけだね」
「しかも、地デジが先行したため、DVDよりテレビ放送が先んじて高解像度化してしまった」
「買ってまで解像度の低い映像を手に入れるのはばからしいわけだね」
「しかし、ここまで来ると既にヤマト時代の価値観は形骸化している」
「確かに。マスプロダクションで大量に複製販売されるなら、それを真剣に保存する意味は無いわけだね」
「むしろ、書籍における国会図書館的な公的な機関が責任を持って保管すべき段階に来ているのだろう……と思う」
オタク問題 §
「形骸化したオタクの行動は何だと思う?」
「おそらく単純な所有欲なのだろう」
「自分のものにしたい、という原始的な欲求?」
「2度と見られないかもしれない、といった合理性はあまり無いのだろう。たぶん」
「どうしてそう思うの?」
「そうじゃなきゃ、炎天下行列してコミケの企業ブースで買い物なんてしない」
「ひ~」
「おいらなら絶対にイヤだ」
「じゃあ、単純な所有欲に駆動されたオタクの行き先は何?」
「岡田さんの本に書いてあったけど、XXさんのファンだけど、XXさんのグッズを集めるだけで、XXさん本人が喜ぶような行動に出ようとは思わない。そんな人が増えるわけだ」
「それってどういうこと?」
「作り手への敬意が大幅に減退し、所有への欲求が突出する」
「なぜそう思うの?」
「作り手への敬意があれば作り手の給料を奪うような著作物泥棒はすまい。しかし、所有欲がメインなら、作り手を踏みつけても欲しいものを奪って行く。踏みつけられたらもう作って貰えないかもしれない、とは思わない。他にいくらでも供給先があるからだ」
オマケヌード §
「ヤマトファンの諸君。ヤマトファンの諸君。これは必見だ」
「なんでヌード写真のページなんか。分かった。完結編ラストの古代と雪のように裸になれということだね?」
「いや。14番の写真を見たまえ」
「えーっ!」