2012年08月09日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 1749 count

三百字小説『ベストオブ衣類』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 いつもA氏に負けているB氏は、実力では負けていないと思っていた。しかし、ファッションが問題なのだ。

 そのとき、店にS伯爵が来ていると声が上がった。S伯爵と言えば、衣類のコーディネートのスペシャリストだ。自分で選んだ服ならダメでも、S伯爵ならベストの選択を選んでくれるはずだ。しかし、B氏もにも無限の財力があるわけではない。身分相応の店でしか買い物はできないのだ。

 B氏はS伯爵に恩を売り込むことをに成功した。

 「お礼に何でもしてあげよう」

 そこでB氏は自分に入れる最高の衣料品店にS伯爵を連れて行った。

 「それでどうすればいいの?」

 「ベストを選んでください」

 彼はハンガーからチョッキを選んで取り出した。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦