「勢いで艦底を塗っちゃったけど、実はその前に上下のかみ合いを見ないといかんかったのだ」
「今時のキットは綺麗に付くのじゃないの?」
「けっこう隙間ができたからな。それを固定しちゃったのだ。そこで歪みが生じていると全体で上手く入らない可能性がある」
「なるほど」
「そして艦上部を組み上げてみたが、どうも上手く決まらない。一部の船体中央の固定部品を外して上手く馴染ませた」
「そうか」
「情報通り、ダボを削っても綺麗にはまる。そこは問題ない」
「そこは、ということは別の場所で問題が?」
「少し浮いてくる箇所がある。ダボの押さえが無くなったからだ。そこは輪ゴムなどで固定しながら最終的に組む必要があるだろう」
「常識的に輪ゴム出動か。昔のプラ模型みたいだね」
「まさに。ダボに頼らなくなった瞬間に時計の針が逆に回った」
そしてゼンマイへ §
「1/1000ヤマトの構造的な弱点はほとんど下部後方に集中している」
「それで?」
「格納庫と艦載機発進口付近に集中している。今日ほど発進口が邪魔だと思った時は無い。あれも部品を引っかける関係上、削る必要があった」
「そうか」
「で、結局これってゼンマイヤマトの弱点と同じだ。艦載機発進口のところに巨大なゼンマイボックス。格納庫は艦上部構造物を取り外すと中に見えるというビックリドッキリ仕様」
「艦載機のサイズは妥当になってきたよ」
「しかし、細かくなりすぎて扱いきれなくなった」
「じゃあ、君が思ったことって……」
「この1/1000ヤマトは重要な部分でゼンマイヤマトの遺伝子を引き継いでいる」
「ならばこの先の展開は?」
「だからさ。ガンプラの歴史は可動の追求なのだ。指の関節まで可動させて誉められた。∀ガンダムに牛を付けて誉められた。だから、その方法論でヤマトも作ってしまう。でも、それは歓迎できる方法論ではない。無駄な部品分割で隙間ができるぐらいなら、格納庫が見えるギミックなど欲しくない。そんな批判に晒されてしまう。バンダイの方法論そのものが曲がり角なのだ」
「は?」
「スケールモデルでもさ。昔はギミックだらけ。マブチのベビーとかミニベビーでプロペラを回す第2次大戦機のキットなんてゴロゴロしていた。それを入れる改造も定番だった。もっとも変わり種になるとモーターの風圧で走行する大スケールの疾風とかそんなキットまであったと記憶する。船もモーターライズで走った。戦車はリモコンが定番。BB弾を発射する戦車キットもあったと思う。しかし、主流の模型はそういったギミックを外していった」
「では、バンダイもギミック抜き可動抜きのキットを学んでいく必要があると?」
「かもしれない。かつてタミヤも辿った道だ」
ならば §
「要らないギミックが弱点。まさにゼンマイヤマトの再来だ」
「1/1000ヤマト2199が、ヤマト模型の決定版ではなく、ゼンマイヤマトの再来だとしたら君はどうするの?」
「燃える」
「なぜだよ」
「ゼンマイヤマト好きだから」
「えー」