「古い地図の断片を見ていた」
「どこ?」
「良く分からない。東京ではあるが、かなり縁が無い場所なのだろう。千川上水が流れている」
「へー」
「それで、鉄道と駅があった」
「なに?」
「駅名は『しばたい』と書いてあった」
「聞いたことがないね」
「いやいや。ハッと気づいた」
「何?」
「『いたばし』なんだよ。今の埼京線にあるだろう」
「えー」
「とすれば、この駅で降りたことがあるよ!」
「なぜ?」
「弟が都営三田線の方面に住んでいるから、板橋で降りて三田線の新板橋まで歩いたんだよ」
「なんという偶然」
「現在の地図と付き合わせると、似た道があり、場所の関係がおおむね特定できた」
「へー」
「おかげで、気づかないうちに千川上水後を横切って乗り換えていたことが分かってしまった。これはびっくりだ」
「縁が無いと思った千川上水に、こんなところで縁があったわけだね」