「というわけで、ヤマト本体の工作はお休みして、箱を準備した」
「どんな箱?」
「箱そのものは、1/1000ヤマト2199の箱が丁度良いサイズなのでそのまま使った。あとはボール紙で中の仕切りを作成し、マスキングテープで仮止めして木工用ボンドを流した」
「これでいいの?」
「台座は輸送時には別扱いした方が良いかも知れない。もし外れて箱の中で暴れると大惨事だ。それにこれだけのボール紙でホールドしきれるかも良く分からない」
第3空母へ、雷撃機発進! §
「ランナーが邪魔くさいし、組み立て説明がヤマトの箱の一部になることが確定したので、同梱の第3空母をへろへろと作ってしまった」
「感想は?」
「組めなかった……」
「は?」
「ストレートに組めない旧キットはここに実例があった」
「ひ~」
「まあともかくだ。こうして一色の出来の悪いキットがそこにあると『私を塗って』と言われたみたいで、そこはいい気分だな」
「これでいいのかよ」
「そのうちに好き勝手に塗ってやろう」
「ひ~」
時限流はオリジナルです §
「どうも誤解があるようだが、このヤマトの工作にも関連する時限流は基本的に自分のオリジナルだ。少なくとも、確立した時期に見た複数の入門書、入門記事、ハウツー記事などの全てに対して反逆する内容として作成した。というか、『時限流』という独自の流派を名乗ったのは、『同じものはおろか似たものすら商業出版物には無かったよ』ということでしかない」
「いつごろ?」
「時限流模型術・指南書 第0.2版(べぇた版)2001年4月11日という文書が公開されたまま残っているから2001年頃と思って良いだろうな」
「えー。10年以上前じゃん」
「2008年頃に出た本など参考にもしようが無い」
「ひ~」
「もちろん。時限流を成立させるための個別の要素については、既存の何かを引用しているケースがある。しかし、『基礎工作は甘いままでいい』と言い切る論調は他では見たことが無い状態で作成した」
「多少のアラは、仕上げていくうちに気にならなくなるってことだね」
「そうだ、しかし同時期の本や雑誌は、ゲートはきちんと処理しようとか、隙間はパテで埋めようとか、そんなのばっかりだった」
「むう。そもそも時限流って何なの?」
「入門書の通りに模型を作ると、手間が掛かりすぎて『面白い』というより苦痛になってしまうのだ。確かに色を塗っているときは良いが、器具の手入れは面白くも何ともない。毎回やることは同じ。エアブラシをうがいさせるとか。いい加減飽きちゃう。こっちはプロじゃ無いし、雑誌に作例が載る可能性もまず無い。私の作品を載せて自慢したい、と思って写真を送るタイプでも無い。そもそも、時間を持てあましたマニアに工作内容で絶対負ける。そんなのと勝負する意味はない。それよりも、模型を作って楽しかった気持で終わりにできることが重要」
「模型が主役では無く楽しい気持が主役ってことだね」
「そうそう。模型が主役になったら、お金でももらわないとやってられないよ」
「ひ~」
「ああしましょう、こうしましょう、という義務感が前に立ってしまうともう模型作りは娯楽じゃ無い」
「指南書はアップデートしないの?」
「さすがに内容に古い部分、変えた方が良い部分が散見されるので、アップデートするかな。今はあまり時間が無いからいつになるか分からないけど」
「そうか」
「もっとも、模型について語るより模型作ってた方が楽しいから書けるかどうか分からないぞ。青一色の第3空母が私を塗ってと待っている~」
「ひ~」