記憶を失った友人がある日突然言った。
「実は俺、ファラオなんだ」
それから僕らは怪しげなエジプト人の刺客に付け狙われて、最後は崖から突き落とされた。
崖下で必死に岩の隙間に捕まって落ちまいと2人して頑張っていると、そこに藁が降りてきた。
「2人分の体重は支えられない。でも1人だけなら助かるぞ。それぐらいの強度はある。どちらが助かるか、醜く争ってみせろ」
「俺も掴むがファラオも掴む。2人では切れるかも知れないが、生きるも死ぬも一蓮托生だ!」
俺達は助かった。刺客はファラオの呪いですぐ倒してしまった。なぜ藁は切れなかったかって? ファラオは水分の抜けたミイラで人間より軽かったからだ。
(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)