2012年09月06日
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三百字小説『ファラオも掴む』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 記憶を失った友人がある日突然言った。

 「実は俺、ファラオなんだ」

 それから僕らは怪しげなエジプト人の刺客に付け狙われて、最後は崖から突き落とされた。

 崖下で必死に岩の隙間に捕まって落ちまいと2人して頑張っていると、そこに藁が降りてきた。

 「2人分の体重は支えられない。でも1人だけなら助かるぞ。それぐらいの強度はある。どちらが助かるか、醜く争ってみせろ」

 「俺も掴むがファラオも掴む。2人では切れるかも知れないが、生きるも死ぬも一蓮托生だ!」

 俺達は助かった。刺客はファラオの呪いですぐ倒してしまった。なぜ藁は切れなかったかって? ファラオは水分の抜けたミイラで人間より軽かったからだ。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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