その軍艦の副長は臆病だった。副長は、艦長の下になるが、なぜかナンバーワンと呼ばれるのが通例だった。
「ナンバーワンは、なぜそんなに臆病なのだ?」
「攻撃命令さえくれれば見事に戦って見せます」
「丁度あそこにUボートの潜望鏡が見えるぞ。あれを仕留めろ。魚を誤認したり、味方を誤認するような間違いはもう許さんぞ。アタック、ナンバーワン!」
副長は張り切って自ら爆雷投射機の指揮を執った。間違いは許されなかったので、誤爆を怖れて投射機には爆雷を詰めず、バレーボールのボールを詰めた。
(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)