「たぶん『3D映像に描きで2Dを描き足すことは是か非か』というテーマを掲げると賛否は両論だと思う」
「2199方式だね」
「問題は、この問題にはもうちょっと根深い問題があること」
「それはなんだい?」
「2D加工には実は2種類あるのだ」
「えっ?」
「1つは、ソフトで加工する方式。Adobe After Effectsなどを使用する。使ったからと言って極端に手間が掛かるわけではないが、使い所を見極めるのは難しいものだ」
「じゃあもう1つは?」
「手で書き加える方式。動画で使えば、使えば使うほどコストが跳ね上がる。全てのコマに描き加えるわけだから」
「なるほど」
「ここで更にもう1つの補助線を引く。特撮だ」
「は? なぜアニメの話に特撮が?」
「フィルムの上に描くことも行われるからだ。つまり、実写という一種の3D映像に手描きのビームなどを追加することは昔から行われていることだ」
「話がかなりややこしくなってきた」
「そうだろう?」
「では、君の考えを聞かせてくれ」
「単純に2Dで描き足すのは自分としては非だ」
「なぜ否定的なの?」
「コストの都合でカメラの動きを制約してしまうからだ。物体を自由に動かすこともできなくなり、静止画は重厚になるが動きが眠くなる。アニメーションは動いてこそ意味があると思う場合、これは良くない傾向に評価できる」
「なら良くないじゃないか」
「しかし、アニメ屋さんはあまりピンと来ないかもしれない」
「なぜ?」
「アニメというのは、コストの都合で大半の動きは眠いものだ。それが嫌ながらコスト度外視の予算と才能を注ぎ込むしか無い」
「ひ~」
「が、問題はここで終わるわけでは無い」
「は?」
「実際には、何もかも3Dで処理せずAfter Effectsに任せた方が良いものもある、という意見もあるし、特撮でも使いようという部分があるのも事実。特定のポーズから発射される必殺ビームを撮るためにカメラやポーズを動かす意味もあまりない」
「スペシウム光線は特定のポーズで発射されるものであって、別にポーズを変えなくてもいいわけだね」
「そういう場合も、2Dでやってしまって悪くは無いと思う」
「最終的に何が言いたいわけだ?」
「だから2Dで描き足すのはおそらく特撮の発想では無いかと思う。総監督が特撮系のデザイナーなので、そういう発想が頭にあったのではないだろうか?」
「そこはアニメ頭には無い柔軟性ということだね」
「でも弱点はある」
「どこ?」
「船というのは基本的に複雑な曲面を持つものなのだ。それを描くだけで本当はただのパンでは済まないぐらい、見かけ上の形状の変化が発生する。でも、手で描き込んでしまうとコスト的にパンになってしまう」
「ひ~」
「そこでポイントはバンダイの1/1000ヤマト2199だ」
「なぜ?」
「模型というのは、複雑な曲面と対話する近道」
「どうやって」
「手に持ったヤマトの角度を少し変えるだけで、違って見えるわけだ。難しい知識もセンスも不要。とても簡単」
「君は現状に不満があるのか楽しいのか良く分からないよ」
「両方だ」