2012年11月15日
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三百字小説『真鱈の干物』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 真鱈は忍者だった。犬の忍者、忍犬があるように、真鱈は鱈の忍者、忍鱈だった。

 真鱈は密猟者の調査を任務として与えられた。真鱈は張り切って、闇操業の漁船に自分から捕まり、そこで内部を調べようとした。

 「ふ。甘かったな、真鱈」

 「待ち伏せか!」

 真鱈はそのまま干物製造マシーンに送り込まれ、水分を全て蒸発させられ、干物にされてしまった。

 「ははは、引っかかったな。それはただの鱈の干物だ」

 「変わり身の術か!」

 真鱈は高笑いして情報を手に本部に戻った。そこで真鱈は怒られた。

 「情報と引き替えに、鱈の同胞を犠牲にして戻ってくるとは何事か!」

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦