「三段空母、戦闘空母につづいて高速空母も分かった」
「このドクトリンだね」
「そう。ガミラス側の射撃ドクトリンは、おそらく以下の通りだ」
「どういうこと?」
「つまり、空母において『先に撃て』と『数で圧倒しろ』は相反する要求だ」
「数で圧倒するには時間が掛かるが、先に撃つためには数を出せないわけだね」
「だから、ガミラスの空母は2種類になる。『先に撃て』型と『数で圧倒しろ』型だ」
「まさか。それが高速空母と三段空母の違い?」
「高速空母は、『数で圧倒しろ』という要求を横に置いて、『先に撃て』に特化した空母と思われる。だから空母そのものが高速に敵地に進出できる」
「なぜ?」
「敵が動く前に叩けば『瀕死のタヌキ』だからだ」
「先手を取ることは重要ってことだね」
「ワープテストの際も、実は僅差で逃しただけで良いところまで追い詰められた。高速空母の高速ぶりが効果を発揮した例だ」
「ワープしたのは想定外ってことだね」
「もう1つ、高速空母は変形機構を装備しない戦闘空母だと思われる」
「えっ?」
「直接打撃力を空母そのものが持っているのだ」
「だから『危険なものは断固消してしまうのだ』で降下するわけだね
「それゆえに、物語後半で高速空母は出てこない。なぜなら、後継艦は戦闘空母だからだ」
「失われた高速空母の代艦は戦闘空母だから、次に出てくる対応する敵空母は戦闘空母ってことだね」
とすれば §
「とすれば、ドメル艦隊が貧弱すぎる謎が解ける」
「どういうこと?」
「ドメル艦隊はたった5隻だ。最初のドメルの大艦隊と比較してこれはあまりに貧弱だ」
「うん」
「でもさ。ドメル艦隊って基本的に新世代艦で構成されていると思えば、話が変わる」
「えっ?」
「たとえば、戦艦大和に旧世代の戦艦が束になって掛かっても勝てない」
「なぜだよ。古い主砲だって当たれば少しずつ壊れるだろ?」
「当たればね」
「えっ?」
「大和の方が射程が長いのだ。相手が撃つ前に撃てる」
「距離を詰めれば」
「実は大和は高速とは言いがたいのだが、旧世代艦はもっと遅い」
「本当に? 金剛とか速いよ」
「あれは高速戦艦として改造したので別格だが、たとえば戦艦扶桑で25ノット程度。大和の27ノット程度には及んでいない。しかも、これでも扶桑は建造後に機関出力をアップして増速しているのだ」
「ひ~」
「だから、おそらくドメル艦隊の5隻は、打撃力において以前のドメルの大艦隊に優越していると考えれば妥当だろう」
とすれば2 §
「とすれば三段空母の欠陥も理解できる」
「どういう意味?」
「三段空母は新世代艦であり、まだ十分に戦訓を取り入れて練り上げていなかったのだ」
「戦訓を取り入れた改良版は二連三段空母まで待つ必要があったわけだね」
「そうだ。改良版空母をガミラスは作りたかったと思うのだが、ヤマトに本土をぐちゃぐちゃにされたので実現していない。だから、ヤマト2時代も新たなる旅立ち時代も欠陥がある三段空母で戦わざるを得ない。そして、新たなる旅立ちでの三段空母のふがいなさは、この欠陥がそのまま露呈したものだと考えれば妥当なところだろう」