2012年11月24日
トーノZEROアニメ感想宇宙戦艦ヤマト total 2435 count

ヤマトはオタク世代のものではなくテレビっ子世代のものか?

Written By: トーノZERO連絡先

「はたと気づいた」

「なんだよ」

「オタク前史の解釈?」

「は?」

「オタクが誕生する前に何があったのか」

「SFファン? 特撮ファン?」

「いや。子供の自分はどちらにも属していないが、かといって、オタク以前の存在であることも確かだ」

「じゃあなに?」

「適切な言葉をやっと思いついた」

「もったいぶらずに言えよ」

「テレビっ子」

「は?」

「テレビっ子とは要するにオタク以前の時代にテレビにどっぷりはまっていた子供だな。それ以上を知りたい人はWikiPediaとかを調べてくれ」

「つまり宇宙戦艦ヤマトはオタク世代のものではなく、テレビっ子世代のものだってことだね」

「1974年当時は……だね」

「話はそれだけ?」

「いや。おそらくテレビっ子は2つの世代に分けられる」

「というと?」

「初めて家にテレビがやってきた経験を持つ第1世代テレビっ子と、初めて家にカラーテレビがやってきた経験を持つ第2世代テレビっ子。自分はその分類では第2世代」

「その違いに意味があるの?」

「ある。第1世代は、テレビに浸るという行為を意識的に選択したが、第2世代は最初からテレビがあった。モノクロだけど」

「それで?」

「第2世代テレビっ子の末期が変質して成立したのがオタク第1世代だと言える」

「テレビっ子とオタクの違いってなに?」

「テレビっ子の特徴はテレビに浸ることで、オタクの特徴はアニメに浸ること」

「違いが良く分からないな」

「うん。言い換えれば、オタクは好き嫌いが激しいのに対して、テレビっ子は雑食性だ」

「それって何?」

「アニメのみならず特撮でもいいし、そもそも外国のドラマでも普通の日本のドラマでもいい。子供向けでも大人向けでも関係ない。つまりカリキュラマシーンでもGメン75でもオッケー」

「えー」

「実際、古い昭和ネタの多いアニメを見ると、Gメン75とか太陽に吠えろはネタにされたりする。ケロロ軍曹でもリメイクのDororonえん魔くん メ~ラめらでもGメン75ネタはやったし」

「バトルスピリッツ覇王では太陽に吠えろネタをやってるね」

「そうだな。ある意味で雑食性なら実写ドラマがネタにされても困らない」

「じゃあ問題はどこにあるわけ?」

「第2世代のテレビっ子のかなりの割合と、一部の第1世代はオタク第1世代に変質していったと考えられる。しかし、変質しなかった人もやはりいるようだ」

「変質するとどうなるわけ?」

「雑食性ではなくなり、間口が狭くなる」

「間口が狭くなるとどうなるわけ?」

「話が合わなくなる」

「具体的には?」

「テレビっ子第2世代的に振る舞うなら、宇宙犬作戦や33分探偵を発見することは、新ルパン以前の時代に旧ルパンを発見することと同質なのだ。みんなが見落としている面白い番組を見つけて、喜んでいるわけだ。しかし、間口が狭くなった層はそういう番組を受け付けない。彼らには彼らの世界があって、自分達には関係ないと考える。また考えざるを得ない。彼らは他の物を見るゆとりが無いほどオタク向けのアニメやネットラジオに浸らされている」

「テレビっ子はそれに同調しないわけ?」

「おそらく同調しない。テレビっ子の行動原理は雑食的に面白いテレビ番組を探し求めることにあって、『食え』と差し出された料理を律儀に全部食べることではないからだ」

「つまりチャンネルを変えちゃうということ?」

「そうだ。つまらなければチャンネルを変える。それがテレビっ子世代だろう」

ならば §

「それならさ。テレビっ子世代は無駄に知識が多いことになるじゃないか」

「そうだ。だからさ。当時高価だったビデオデッキを駆使してヤマトとハイジと猿の軍団を全部見ていた人たちも存在するらしい。こっちはただの子供でそれはできなかったが、ヤマトの本編が終わった瞬間にチャンネルを回して猿の軍団を一瞬見るとか、再放送でハイジを全話見ることぐらいはやった」

「ひ~」

「だからテレビっ子世代にとってのヤマトショックは、もしかしたら中身が凄かったのではなく、これだけのことをテレビアニメで放送したことが凄いと受け止めた可能性もある」

「通俗的なテレビアニメではここまでできないはずだ、ということをやったわけだね」

「たぶん、そこはヤマト受容の分かれ道だよ」

別の言い方をするなら §

「別の言い方をすれば、テレビっ子はテレビグルメだ。テレビの味をよく知っていて、番組を選ぶ。そこで、実は番組選別に厳しい目を持つ。面白ければ子ども番組でも肯定すると同時に、どれほど大人向けでも緊張感が無い面白くない番組はまたいで通る」

「それで?」

「だからさ。ガッチャマンやトリトンや、別系統で少年ドラマシリーズとか、変身しない特撮ドラマとか、そのへんを経由してきたテレビっ子には怪獣ブームもマジンガーZも十分にアピールしていない可能性がある」

「そこでヤマトが出てきて飛びついたわけだね」

「かもしれない。かなりの饑餓感があったと思う」

「つまり、それはヤマトブーム以後にヤマトに来た人たちとは異質ということだね?」

「かもしれない。バリューが確立してから来た人と、確立する前に来た人ではかなり心構えが違うはずだ」

オマケ §

「テレビっ子のメディアはおそらくテレビマガジン、テレビランド」

「アニメ雑誌じゃなくて?」

「そんなのは無い時代だ」

「えー」

「だから出渕総監督の思い出話にはそういう雑誌の編集部にバックナンバーのコピーをもらいに行く話が出てくる」

「そこは世代が重なるわけだね」

「そして、ヤマト2199のコスモタイガーはワンダバになり、特撮ネタも多く入り込む」

「テレビっ子世代は雑食だからだね」

オマケ §

「テレビっ子第2世代的に振る舞うなら、宇宙犬作戦や33分探偵を発見することは、新ルパン以前の時代に旧ルパンを発見することと同質なのだ。みんなが見落としている面白い番組を見つけて、喜んでいるわけだ。しかし、間口が狭くなった層はそういう番組を受け付けない。彼らには彼らの世界があって、自分達には関係ないと考える」

「つまり、男には自分の世界がある。喩えるなら空をかける一筋の流れ星ってことだね」

「それは……違うような違わないような……」

「話が通じない君は、孤独な笑みを夕日にさらして背中で泣いているわけだね」

「それは……やはり違うような」

宇宙戦艦ヤマト

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