2012年11月24日
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感想「電撃HOBBY MAGAZINE 2013年 01月号・Gの伝説」

Written By: トーノZERO連絡先

「コスモファルコン目当てで買ったけど、こっちの方が凄い。開いた口が塞がらなかったね」

「なぜ?」

「方法論が、自分が昔書いた『宇宙世紀の駄ッ作機』とそっくりだから」

「えっ?」

「ガンダム的秩序に逆らうのは自分だけかと思いきやプロにもいたわけだ。これは痛快だ」

「ひ~。詳しく説明してくれよ」

ソロモン・エクスプレス §

「14年前のソロモン・エクスプレスという企画を自分は知らない」

「そうか」

「『宇宙世紀の駄ッ作機』は日付を見ると2002年だから10年前。しかし、影響は全く無い。知らないものからの影響は受けようが無い。というよりも、自分1人ではみ出していた気分だったので、他に誰かいるとは思ってもいなかった」

「全く影響が無いにも関わらずどこが似ているの?」

「良い質問だ」

  • 人型の兵器が絶対に強いなどと、これっぽっちも信じていない
  • 最低限の設定の枠組みは絶対的に遵守する
  • その先は設定の枠組みをどんどん逸脱していく
  • 勝手に隙間の兵器を創作してしまう
  • 勝手に隙間の物語を創作してしまう
  • 喜んで面白がって設定からはみ出す (止むを得ず渋々逸脱するわけでは無い)
  • Gアーマーが実在でコア・ブースターの映像は改竄という解釈

「『宇宙世紀の駄ッ作機』はどう設定を守ってどう逸脱したの?」

「テレビシリーズの機動戦士ガンダムいわゆるファーストガンダムに描かれたものはすべて事実と捉え、それだけは絶対的に遵守するようにした。しかし、その先は一切の公式設定を『つまらん』と一蹴して自分なりの勝手な解釈を創作して書き込んだ」

「それが『異端の宇宙世紀史へようこそ』という意味だね」

「そうそう。異端であることが前提。ある一線までの設定は絶対的に遵守しながら、そこからはみ出すことが前提」

「いったいなぜ?」

「設定を遵守する連中ばかりでつまらないが、その遵守される設定がつまらなければ、もっと世の中がつまらなくなる」

「ひ~」

感想・Gの伝説 §

「さて問題はこのGの伝説だ」

「どうなの?」

「マラサイの作例が3機出てくるわけだが……」

「が?」

「実は2機目の作例になると足らしい足が無い」

「えっ」

「3機目の作例は顔が見えない。もしかしたら顔らしい顔が無いのかも知れない」

「顔が見えないってどういうこと?」

「顔に相当する部分がどの写真でも影になっていてよく見えないのだ。ここまで徹底していると、単に写真をミスしたのではなく、意図的に顔の部分を影にして黒く撮ったとしか思えない」

「えー」

「グレンダイザーはUFOに顔があるが、この作例には顔が無い」

(括弧付きの感想・Gの伝説) §

「そうか。分かった」

「なんだよ」

「折り込まれたイラストの1機はジュピター・ゴーストという名前なのだ」

「それで?」

「本文ではジュピター・ホエールというクジラ的な存在を木星で狩る描写が出てくるのだ」

「だからなんだよ」

「ジュピター・ゴーストと来てクジラ的な何かなんだよ!」

「は?」

「では、さよならー」

「ちょっとまて。それじゃ分からないよ」

「もうジュピターからは、さよならするんだ」

(更に括弧付きの感想・Gの伝説) §

「つまりさ。こういうガンダムからの脱線も『宇宙世紀の駄ッ作機』と方法論として同じなんだよ」

「えー」

「隠し味にとどめておくのも同じ」

「ひ~」

「ネットで名も無いファンがぼやいているだけかと思いきや。プロも商業誌でやっていたとは面白いね」

コア・ブースター §

「しかしなあ。『Gアーマーが実在でコア・ブースターの映像は改竄という解釈』というかなり細かい部分が一致したのは凄いことだな」

「確かに細かいね」

「というか、普通のマニアなら玩具みたいなGアーマーを否定して、コア・ブースターを事実と見なしたがるだろう。それに対して、あえてGアーマーの方を実在すると解釈する皮肉な態度まで重なるとは驚いた」

「ひ~」

まとめ §

「というわけで、まとめよう。面白かった」

「どこが面白いの?」

「2002年の段階では記述不可能な話題によって、物語の質そのものが昇華されているからだ」

「どんな話題だよ」

「つまり、お台場の1/1ガンダムという物理的な実在の遺物を経由して、未来の誰かがガンダムを実話と勘違いする展開だ。これは素直に面白い。ワクワクする」

「いかにも有り得そうなリアリティがあるってことだね」

「そう。歴史の分野で遺物の解釈を間違うことは珍しくも無い。それは有り得る話だ」

「設定通りの宇宙世紀を肯定するよりも、はみ出した方がリアリティがあるわけだね」

「実に皮肉なことにその通り。未来の可能性で語られるのではなく、既に確定した過去と誤解釈によって物語が成立している。これは素直に面白い」