2012年12月13日
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三百字小説『花の精の子供』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 彼女は花の精の子供だった。ずっと、家で暮らしていた。しかし、それでは社会性の無い子供になってしまう。花の精は、子供を学校にやることにした。

 学校には様々な花とそれにまつわる生き物が集まっていた。そこでは誰も彼女を「花の精」とは呼ばなかった。花に関連する者しか来ないので、精と呼ばれた。

 ある日、授業参観に母親が来るとその美しさに学校は上へ下への大騒ぎ、子供の方は面食らうばかり。

 そして親と子を区別するために定着したあだ名が精母と精子。

 「精子、精子」と毎日呼びかけられて花の精の子供は逃げ出してしまった。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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