「今年はTVアニメ50周年と言いたがる人が多い」
「なぜ?」
「初のテレビアニメの鉄腕アトムが1963年1月1日に放送を開始して、50年目を迎えたからだろう」
「なら、めでたいわけだね」
「そうかな?」
「えっ?」
「日本のアニメーション史が鉄腕アトムから始まったわけでは無い。むしろ、低予算粗製濫造の開始という悪い節目に捉える視点すらある。とてもめでたいとは言いきれないよ」
「ひ~」
「低予算粗製濫造に多少なりとも歯止めを掛けたのが宇宙戦艦ヤマトということになる。ここから始まったアニメブームが、手間を掛けた良心的なアニメ作りの可能性をやっと開いたとも言える。もっとも、低予算粗製濫造アニメはそれ以後もずっとあるけどね」
「低予算粗製濫造アニメという、悩ましい過去があるのか」
「過去じゃないよ。今でもやっぱりろくでもないアニメは多いよ」
「ひ~。過ぎ去った過去じゃ無いのか」
「むしろ、状況は悪くなっているね」
「では君はどう評価するわけだい?」
「少しでもヤマトが歯止めを掛けた悪習を50周年とかいって喜ぶかと言われるとそれは怪しいな」
「ひ~」
「まあ、それでも浮かれて騒ぐ連中はいるだろうが、自分は参加する気が無い……とだけ釘を刺しておこう」
オマケ §
「大変だ」
「なんだよ」
「君の話を君の母親から聞いてきたぞ」
「何を聞いたんだよ」
「幼少の君は喜んで鉄腕アトムをテレビで見ていたって」
「だからといって、鉄腕アトムを褒め称えるわけじゃ無いぞ」
オマケ2 §
「大変だ」
「なんだよ」
「君の話を君の元クラスメートから聞いてきたぞ」
「何を聞いたんだよ」
「君は喜んでアトム今昔物語を借りて読んでいたって」
「だからといって、アニメの鉄腕アトムを褒め称えるわけじゃ無いぞ」
オマケIII §
「アトム批判をすることに矛盾を感じないの?」
「別に」
「なぜだよ」
「子供の頃は、ジェッターマルス派だったから」
「ぎゃふん」