2013年01月10日
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三百字小説『浪速のいなにわ』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 浪速のキザ男が、日本制覇を賭けて東北に進出してきた。東日本は蕎麦ばかりで辟易していた彼は、そこで稲庭うどんを発見して驚喜した。東日本の拠点はここにするしかない!

 浪速のキザ男はさっそく、浪速から配下を呼び寄せて稲庭シティを取り囲んだ。

 「大人しく降伏して軍門下れ! さもなくば攻撃する!」

 さっそく人望のある古老が使者としてとなって、浪速の男を訪れた。さっそく交渉が行われたが、古老の訛りはきつく、サッパリ意味が分からなかった。

 「おい、そこの若いの。この地方の訛りはこんなにきついのか?」

 「おたくの訛りもやたらきついじゃないですか。ここで、その方言は通じませんよ」

 浪速のキザ男は、稲庭シティへの進出を諦めた。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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