「DC版で監督代行となった小林誠さんは、まさに艦長代理をやった古代と同じような立場に立った唯一の人物で、俺達にとっては神さまみたいな人だ」
「分かった分かった。本題に入れよ。四谷シモンって何? 使徒のパチモン?」
「いやいや。その道で名前が知られた人形作家の人だ。映画イノセンスの人形のモデルの製作者だ」
「それで?」
「実は他の誰でも良かったのだが、たまたま名前が思い浮かんだので、小林誠さんとお話をしているときに名前を出した。そうしたら、小林誠さんは名前を知っていって、話がとてもスムーズにつながった。スムーズすぎるほどだ。これは驚きだ」
「どれぐらいスムーズなの?」
「四谷シモンさんの弟子の方々の作品展は見たことがあるのだが、会話で四谷シモンさんの名前を出したのは自分だけど、実は先に弟子の方々に言及したのは小林誠さんだった。あまりに話がスムーズに進みすぎる。だからうっかり見落とした」
「何を見落としたというの?」
「四谷シモンさんの弟子の方々の作品展を見に行った場所は紀ノ国屋書店なんだよ」
「だからどうした」
「現在はヤマトの特設ショップがあった紀ノ国屋書店なんだよ!」
「ぎゃふん。なぜ関係ない人形の話を延々としているかと思ったら、そりゃ確かに一回りしたらヤマト2199絡みの話題だ」
「しかし、まだ甘かった」
「なぜ?」
「2199第14話のキーアイテムの1つが人形だからだ」
ヤマト2199の第14話「魔女はささやく」 §
「ヤマト2199の第14話のキーアイテムは、いろいろある」
- 電話機
- 夢ラベルの酒、
- 人形
- アナウンサー
- ハーモニカ
- 雪に渡される立体写真
- 劇場
- 遊星爆弾
- 岬の拘束具
「多いので見落としたわけだね」
「しかし、人形に着目して14話を見たら、いろいろ分かってきたぞ」
「何が分かったの?」
「魔女はささやくというサブタイトルの魔女は、普通に見るとミレーネルに思えるがミレーネルではないかもしれない」
「は?」
「14話の話は、ミレーネルが状況を掌握しているように見せかけつつ、実は彼女が翻弄される話なのだ」
「どういう意味?」
「ミレーネルの本体は遺跡の装置の中にあった。ヤマトに居たわけではない。仮想の身体が波動防壁を通過できないとしても、最後の最後の瞬間、波動防壁は存在しなかった。しかし、ミレーネルの精神は戻らなかった。なぜか」
「なぜかって。なぜだろうね」
「普通に考えると分からない」
「君は普通に考えなかったのだね?」
「そうだ。この14話という話は実はミレーネルがヤマトに介入した話のように見せ掛けて、実はイスカンダル側の全面介入という話……かもしれない」
「それは大胆だ」
「だからさ。人形もその線から解釈できる」
「じゃあ人形ってなに?」
「人形はミレーネルがいてもいなくても出てくる。しかし、ハーモニカをくれる古代守が出てくるときだけは出てこない。そのとき、古代守を呼びに行ったか、古代守に化けたと考えられる」
「そんなに特別な存在?」
「そうさ。特別だ。だって、家の電話を取った後、公衆電話に変わってしまうのだが、親族も家具も何1つついてこないのにミレーネルと人形だけついてくる」
「じゃあ、どうしてミレーネルの精神は戻らなかったと思うわけ?」
「実は、最後にミレーネルが雪の非常口に入って行動を強制しているとき、横に人形がある。介入しているイスカンダル人のメタファが人形なら、最終的に人形が介入してミレーネルの息の根を止めたとも考えられる」
「それって本当?」
「さあ」
「さあって……」
「実は自分でも別の解釈を持っていて、決めかねているところだ」
オマケ §
「実はさ。モデルカーレーサーズという本を見せて頂き、目から鱗が落ちまくった」
「車には興味が無いんだろう?」
「そこだっ!」
「どこどこ?」
「子供の頃を思い出すと、量は多くないがミニカーは持っていった。興味がゼロということはなかった。なのに、なぜ縁が切れたんだ?」
「えーと、ポインターとかマックスカーは空を飛んだけど、そのあとの車は飛ばなくなったから?」
「そうじゃないことに気がついた。実は、飛ばない車であろうとも、興味はあった」
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「モデグラの車やバイクの記事は読み飛ばして矛盾を感じないのに、モデルカーレーサーズのページは飛ばせない。ならばいったいどこに差があるのか」
「どこにあったんだい?」
「おおざっぱに言うと以下の2つだ」
「頂点のありかとは?」
「普通の模型雑誌の車の頂点はF-1だ。しかし、これは部外者には興味が持てない。恣意的なルール下で同じ場所をぐるぐるまわるだけの車は、部外者からは最高に思えない」
「ルールなんか無視すればもっと凄い車が作れそうだと思った瞬間、興味が持続できないわけだね」
「それに対して、モデルカーレーサーズの頂点はレコードブレーカーつまり、記録を塗り替えるための怪物車。スピードを出すことに特化した、怪物的な形状は部外者にも分かる。確かに凄いと納得させられる」
「そうか。そこでページを飛ばせなくなるわけだね」
「そうだ」
「次の対象のありかとは?」
「普通の模型雑誌は、実車があって模型がある。しかし、この雑誌では模型があって実車がある」
「どういう意味?」
「だからね。目の前の模型の色や形が面白いから掲載されている。実車の存在意義はとりあえず関係ない」
「分かったぞ。どれほど意義深い車であろうと、色や形が凡庸なら読み飛ばせてしまう訳か」
「そうだ。そういう意味で、レコードブレーカーも同じ。これらは、レコードブレーカーだから目に止まるのではなく、形状があまりにも凄いのでまず目に止まる」
「なるほど。それで最終的に何が言いたいわけ?」
「だからさ。おいらのスタンスは『目の前の形状について考える』なんだよ。そして、この雑誌も、能書きより目の前の形状の面白さで誌面が構築されているのだよ」
「分かった。普通の模型雑誌よりも、君の心にずっと近いわけだね」
「その通りだ。だからさ、この雑誌はレースマシンも載っているけれど、見せ方が全く違う。それゆえに読み飛ばせない」
「面白い形状の内部メカニズムを見せられると、そこで目が止まってしまうわけだね」
「他にもいろいろ話がある」
「たとえば?」
「コンピュータを使った模型の話も少し載っていたが、結局、知らなかっただけで同じような時代に同じようなことをやっていたことが良く分かった。たとえば、コンピュータ上のCGと実際に削り出したものは印象が違うとかね。10年以上前にこっちがやってたことと同じだ」
「CGで完璧なモデルが作れれば、それを削り出して完璧な模型ができるのじゃないの?」
「それは無理。機材にそんな精度は無い上に、印象の差も出てくる。モデルの見方も同じではない」
「じゃあ、君は最終的に何が言いたいわけ?」
「うん。だからさ。それと気づかないうちに、とてつもなく似通ったものを長い間見てきたから、いきなり話をしても会話が通じる。しかし、似通ったものを見てこなかった多数派の人とは話がそれほど通じない。それが良く分かった」
「もっとぶっちゃけて言うと?」
「小林誠さん、最近の模型雑誌は全く見てないそうだ。自分も見てない。結局誰かが指図したわけでは無いのに行動が同じ」
「最近、時々買ってるじゃん」
「ヤマトが載ったときだけびっくりして買うだけ。基本的には見てない。見なくていい。他人の作品を見なくて良いと思っているわけではないが、模型雑誌のプロモデラーの作例からはあまりピンと来るものがない」
「そんなにピンと来ない?」
「たとえば、ガミラス艦の作例がどの雑誌にも載っていたけれど、どれもつまらない。電飾なんか仕込む必要は無いし、塗り方も単調すぎる。もうちょっと枠をはみ出してガミラス艦ならでは凄みを出せるのではないか、と思うがそういう発想で塗ってくる作例が1つも無い」
「酷評だね」
「思わず自分でキット買って塗ろうかと思ったぐらいだ。まあ今のところ、手を付けた模型が多いから買わないけど」
「完成するまで次は買えないわけ?」
「そうそう。もう1つ補足すると、完成していないキットが増えてしまうことへのお悩み相談的なページもあった。これも、ハッとさせられる」
「なんで?」
「自分のテーマは昔からキットの消費なんだ。気持良くキットを完成させて次に行きたい。そのためにはどういうスタンスでキットに向き合えば良いか。自分の1990年代後期の塗装に関する試行錯誤とはそれだったのだ」
「なるほど。そこもやっていることが似ていたわけだね」
「示し合わせた訳ではない。でも、どことなく似ているムードがあった。そのことに今頃気づくとは痛恨だ」
「わははは」
「ただ、1つだけ言えることがある」
「なんだよ」
「ヤマトというテーマを突き抜けた結果として、小林誠さんという名前を発見した。この名前に注目することの正しさは過去の実績から既に保証されている」
「復活篇派らしい結論だね」
「これ以上進むとヤマトではなくなってしまうヤマト限界を超えた先に何があるのか、やっとその答えが出てきた」
オマケ2 §
「自分の昔の視点で言うと、F-1というのはダメダメ」
「なんで?」
「翼の付け方が逆だ。揚力をスポイルしてどうするの。せっかく空が飛べるぐらいのパワーがエンジンにあるのに飛ばさないってどういうことよ。そう思ったこともありました」
「今はどうなの?」
「レコードブレーカーが目指す最速の境地は、もう小田急SE車が国鉄線で狭軌最速の記録をたたき出すような話と同じで、飛ぶかどうかとは別の問題。それは燃える話だ」
オマケIII §
「モデルカーレーサーズ最大の罠。それは何か分かるかい?」
「なんだい?」
「モデルカーでもレーサーでもないものがけっこう載っている」
「えー」
「写真の隅にエンタープライズみたいなのや、チキンウォーカーや、けっこう意外なものが載っている。車にしてもバットマンカーとかポインターが載っていたりしてね」
「君が入り込める余地は多くありそうだね」
「そうだ。ページの隅に小さくだろうとポインターが載っていれば、それだけで入っていける。いや、バットマンカーで十分」
オマケのオマケ §
「我々の若い頃はいろいろと画期的な商品が発売されて成立している。プラバンとか空中モーターとかタミヤのギヤボックスや電池ボックスの商品も出てきている」
「それで?」
「実はこの中でプラバンだけ立ち位置が特殊なのだ」
「どうして?」
「目的が無いんだ」
「目的の無い商品なんてないだろう」
「言い換えよう。たとえば電池ボックスは電池を入れる。それは売られた時点で目的が決まっていることを示す。しかしプラバンにはそれが無い。それを使ってどのような形状の何を作るのかは一切が客の構想次第だ」
「それに意味があるの?」
「ある。構想力が試されるのだ。作例をトレースしているだけではすぐにアイデアが尽きる。だからプラバン工作を続けていたマニアは、構想力があるマニアだと思う」
「で、そのマニアとは誰だい?」
「実はLASTEXILE GALLERYで『人生を変えたのはヤマトとプラバン』というような趣旨の文章を見つけた。小林さんがそのあとで構想力豊かな仕事を多く行っていることから考えて、プラバンに言及してもおかしくないと思ったよ」
「話はそれだけ?」
「おいらも昔はプラバン大好き少年だったよ」
「ひ~。しかし君もそんなに構想力豊かだったの?」
「無から形状を構想しないとプラバン工作はできないからな。しかも平面展開図で発想しないと切り出せない」
「今はゼロから形状を作ってないじゃん」
「今は、色に構想力を発揮するタイプに変貌したからな」
「ひ~。説明書通りに塗らない男が来たよ」
「だからさ。そこから逆算すると、実はヤマトを緑に塗るのは大人しい部類なの。戦艦大和に艦艇緑説がある以上、類似品の宇宙戦艦ヤマトを緑に塗ることはそれほど大胆な独創では無いわけ。だから、反響の大きさは逆にこっちがびっくりしちゃうの。本当の独創って、こんなもんじゃないでしょ?……と思っても基準が違いすぎるわけ」
「分かった。模型雑誌が君の刺激にならないわけだ」
「ちなみに、プロモデラーの世界は予想の3倍ぐらい深そうだ。3倍ぐらい深いと、そこに自分が活動する余地がありそうだ……と思ったけど、今さら既存のプロモデラーを押しのけて仕事をするほどのパワーは残っちゃいない」
「そういえば何か言いたいことがあったんじゃないか?」
「ああ。あの件か。ホビージャパンの山田卓司さんの作例。ヤマトをスパッと切って、沈みつつあるヤマトのジオラマを作っている。ああいうスパッと切る発想は、実は自分のヤマトの2号艦でも、格納庫のファルコンでやってる。格納庫の奥行きを出すために、ファルコンをスバッと切って頭だけとかお尻だけエレベータ下に貼り付けてある。発想はそれと同じ。でも、模型雑誌のプロモデラーでそこまでスパッと切れる人がどれほどいるかといえば、あまり事例を見ない。たぶん、今時のプロモデラーなら格納庫をフルスクラッチする方が多いような気がする」
「それは山田卓司さんは特別という意味?」
「おそらく特別だろう」
「君も?」
「さあな。それは知らん。想像を絶する変態野郎という意味で特別な目で見られているかも知れないぞ」
「ぎゃふん」
「それよりも、やってることが理解不能だからそもそも言及できない可能性すらある」
「なぜ理解不能になるの?」
「だって、模型雑誌ではなく、美術館で受けた刺激で塗ってるから」
「美術館で刺激を受けると何が違うの?」
「こんな大ざっぱな塗り分けでいいのか、と思うことができて、自分も模型を精密に作ろうとは思わなくなるので、楽でいいぞ」
「アートを目指すとハードルは上がらないの?」
「模型はしょせん自己満足。アートなんて目指してないから、ハードルなんて存在しないよ。自分が楽しければそれでオシマイよ」
「ぎゃふん」
「あえて結論を言えば、そこだね。楽しくキットを消化する。それだけ。その先の世界はあるけど、そもそもキットを普通に作って行ける世界じゃない。あれはまた別だ」
「キットすら素材と見て解釈を創造する構想力が必要ってことだね」
「そう。なまじキットを使うとかえってハードルが上がる世界だろう」
「素材もプラではない?」
「石膏だったり、木だったり、発泡スチロールだったり、いろいろありだろう」
「見てきたように言うね」
「亜種も含めれば全部扱った経験あるよ」
「ぎゃふん」
オマケのオマケのオマケ §
「でかい発泡スチロールの塊からカッターで切り出して、ひたすら船ばかり作っていた夏。NHKでスターロスト宇宙船アークを放送していた夏だったような気がするけど、既に記憶もあやふやだ」
「スターロスト宇宙船アークって、凄くマイナーじゃないか?」
「しかし、NHKで放送したのが何年かサイトごとにぶれていてはっきりしない」
「それが重要?」
「ヤマト放送前なら、そのとき、宇宙戦艦ヤマトを発泡スチロールで作ろうとしなかった理由は『まだ知らないから』。でも、ヤマト放送後だと、工作能力や素材の限界かもしれない。どちらかは明確ではない」
「まあ、あんな突起だらけの形状は発泡スチロールでは無理だろう」
「しかし、インポートDVDでスターロストがあると知って、思わずグラッときた。もし、日本語音声か字幕があったらポチっていたかもしれない」
「リージョン1でも?」
「既にリージョン1のLAST EXILE買ってるよ。英語音声聞くために」
「ぎゃふん」
「ついでに、YouTubeにOPがあったけど、音楽に聞き覚えがあるなあ。NHKで放送した時と同じ音楽かなあ」
「それにしても、スターウォーズでもスタートレックでもなくスターロストとはねえ」
「どうやらサイレントランニングが1972年でスターロストが1973年(カナダでのタイミング)。そしてヤマトが1974年という時系列みたいだ」
「サイレントランニングとは、これまた渋いね」
「しかし、『STARLOSTのパイロットフィルムが収録されているんだが、使われている映像は、そのまんま「サイレントランニング」だった』という記述をネットで発見した時は大いに納得したよ。ちなみに自分が見た順番はスターロストが先」
「しかしヤマトへの関連性が何かあると思う?」
「イスカンダルからのメッセージが来る前のヤマト計画は、要するに地球脱出船だ。スターロスト的な世代宇宙船のイメージだった可能性もある」
「ヤマト艦内で子を産み育て死んでいくイメージ?」
「亜光速船で別の恒星系を目指すならそうなるだろう」
オマケのオマケのオマケのオマケ §
「というわけで、小林誠さんも好きなギャラクティカにはサイレントランニングの宇宙船が出てくるので、これで話が綺麗に一回りしてオシマイだ」
「長々と与太話をやって終わりはこれかい」
「綺麗に終わっただろう?」
「どこがだよっ!」
「それにしても、うかつだった。サイレントランニングを経由してスターロストとギャラクティカがつながってしまうとは」
「結局見てるものは似通っているわけだね」
「サイレントランニングを最初に見た時の不思議な気持。ギャラクティカを無視できない不思議な気持。全部つながったよ」